千沼ケ原に匹敵する規模の高層湿原でありながら、アクセスする登山道がないために岩手山周辺の最後の秘境となっている栗木ケ原
地元に住む僕にとって、この栗木ケ原を訪ねてみることは一つの夢だった。
しかし、周辺を背丈2m以上のネマガリダケに囲まれた栗木ケ原に到達するにはどうすればよいか。
それは沢登りをするか、積雪期にスキーでアプローチするしかなかった。
僕は沢登りはできないけれど、スキーに関しては最も機動力の高いテレマークスキーの経験があった。
「これしかない」と思ったのが3年前。
このプロジェクトはスタートした。
まずはルート検討
1、網張スキー場から三ツ石山北回り経由
2、網張スキー場から三ツ石山南回り経由
3、樹海ラインから大深岳経由
1、2のルートは網張スキー場が営業しているかどうかで難易度がかなり違ってくる。
スキー場が営業していればリフトを利用できるので体力的に楽だし時間短縮効果も大きい。
しかし、積雪の多い時期ゆえ、雪崩の危険性も高く、なによりも肝心な湿原が雪の下になっているため探訪の意味が薄い。
3のルートはたまたま八幡平を滑った帰りに発見したオリジナルルート。
藪も少なく、樹海ラインを利用するため標高差も比較的少ない。が、その反面、網張ルートに比べ走行距離は長くなる。この時期の樹海ラインは17時以降通行止めとなるため、時間との戦いも強いられることになる。
このように色々と検討し、挑戦してきた秘境、栗木ケ原湿原探訪のプロジェクトも、今年3年目を迎える。
今回選んだ道具も、僕が最初に購入したテレマーク板でもあるマズフスのステップソール。
ダブルキャンバーの細板は最高の機動力で、栗木ケ原湿原探索にはうってつけだ。
平成20年4月下旬
この冬は去年にもまして雪が少なく、麓から見える網張スキー場もすっかり地肌を露出している。
この分では確実に兎平まではハイクアップを強いられることになるけれど、昨年の経験から言えば、逆に雪解けがそのぐらい進んだ状態でないと、栗木ケ原に到達しても池塘を眺めることは、まずできないと断言できる。
そのぐらい栗木ケ原は手強い相手なのだ。
第一リフトからハイクアップし第2リフト終点の兎平までくると、予想通り雪が残っていた。同じ登るのでも、ハイクアップとスキーを履いてでは、時間が異なる。
その証拠に、ここまでのコースタイムは昨年を上回ってしまった。
ここからはスキーを履き、そのまま、標識⑩からツアーコースに入る。
マズフスの細板は、シールなしでも快適に登高してくれる。
雪質も最高のザラメだ。
天気は風が強いものの視界もよく、岩手山を始め、秋田駒ケ岳や裏岩手連峰の山並みが美しい。
大松倉山から三ツ石山荘までの下りは、ザラメの雪質は申し分ないものの、だいぶ藪が露出してきているので、思うような滑降はできない。
三ツ石山荘のなかで休憩し、この先のルートを確認する。
まずは三ツ石山の北東斜面をトラバース気味に三ツ沼まで登り、そこから南西に三ツ沼湿原へ回りこみ、その時点で雪の残り具合を確認し、その先のルートを決めることにした。
三ツ石山の北東斜面をマズフスは快適に登っていく。道具が良いと登りも楽しい。
三ツ石山の北西斜面はすっかり雪が消えているけれど、三ツ沼湿原は雪が残っている。このことは3年前のツアーで確認済みだった。
その三ツ沼湿原を南西に辿り、1,362mの地点標高の手前で北西へ尾根を乗り越えることにする。針葉樹を選んで歩けば雪が残っていそうだ。
尾根を乗り越えれば、昨年の挑戦で帰りに使った尾根ルートに合流できるはずだ。
乗り越し地点からは尾根ルートまで雪が連続してついていることを確認でき、確実に栗木ケ原に到達できることを確信する。
あとは忠実にルートをトレースすればよいのだ。
その直後、視界の片隅に動く物影を感じた。
その方向に目を向けると、40mぐらい先の斜面上にツキノワグマが1頭いた。
あちらの方が先に僕の存在に気づいたようで、ものすごい速さで斜面をさらに上の方へ逃げていった。
熊鈴を付けていて良かった。
こんな稜線近くで熊に出くわすとは意外だったけれど、あまりの速さで写真を撮れなかったのは残念だった。
待望の栗木ケ原は、予想通り池塘が見えるくらい雪解けが進んでいた。
遂に栗木ケ原の核心部分に触れることが出来た。
いつも通り、湿原全体を見渡せる場所で昼ごはんのおにぎりをほおばる。
念願が叶ったこともあり、おにぎりの味は格別だ。
食後に池塘の周りを一回りし、帰路につく。
帰りの行程も長く、標高差もあるので、気合を入れる。
ちなみに、このコースはアップダウンが多く、トータルの標高差は1,134mにも及ぶ。
これは栗駒ツアーの場合より300mも多く、鳥海山ツアーよりも100mほど多い。
三ツ石山から三ツ石山荘へ下る大ピステは、滑りの点において、今回のツアー最大の楽しみだ。
雪質は最高のザラメで、少しフィルムクラストしているものの、ダブルキャンバーの細板でも難なくターンを楽しむことができる。
裏岩手でも有数のスケールを誇るこの大ピステは、横方向に長い。
従って、ステップソールの板であれば、滑り終えた後に切り返し気味に移動し高度を稼げるので、心ゆくまで滑降を堪能できる。
そんなわけで、至福のひと時を3度ほど楽しんだ。
栗木ケ原探訪は、ダブルキャンバーの細板の魅力を最大限に引き出してくれるツアーだと言える。
快感に浸ったあとは、三ツ石山荘で一休みする。
小屋の煙突からは煙が上がり、中に入ると、つぼ足で宴会をしにきたという中高年の宿泊客が3人いた。
小屋で足に出来たマメの手当てをし、すぐに大松倉山の登りにとりかかる。
大松倉山から双子峠に下る斜面も、規模は小さいものの滑りは楽しめた。
やがて、スキー場の林間コースに出て兎平に滑り着く。
行きはここからスキーを履いたけれど、帰りはゲレンデのはじっこに所々残った雪をつなぎながら、行けるところまでスキーで下山することにする。
三ツ石山の大ピステの滑降も楽しいけれど、こういう“ちまちま”したスキーも、また楽しい。
最終的に、標高970mぐらいのところまで、スキーで降りることができた。
雪がすっかり消えたスキー場の駐車場にたどり着き、僕の栗木ケ原探訪も、今回が完結編となった。
ウエブマスター (木曜日, 22 7月 2021 15:34)
昔の列車旅は、移動中も面白味がありました。駅にも「名所案内」の看板があり、駅名表示の下にも「●●郡●●村」とか書いてあるのが好きでした。
白州丸 (土曜日, 17 7月 2021 15:24)
宮城〜岩手〜秋田〜青森と東北縦横断の旅堪能しました。沿線の温泉に入りたい!
画像加工いいですね!!
ウエブマスター (金曜日, 16 7月 2021 23:49)
私が描いたと言いたいところですが、撮った写真を加工したんですよー
でも、文字は女流書家 泉に依頼したものです!
白州丸 (水曜日, 14 7月 2021 16:46)
産業と共に生きた雫駅の歴史が分かります。駅舎のスケッチも良いですが因みに誰のタッチ?
ウエブマスター (土曜日, 13 3月 2021 11:08)
徳永さん、了解しました!
ウエブマスターまでメールいただければ地図を返信いたします!
徳永光保 (金曜日, 12 3月 2021 07:33)
前山の記事 拝見しました。
西和賀方面にこの時期にいけるところを探していたので興味があります。だいたい見当はつくのですが
もしよろしかったらルートの地図をいただけないでしょうか。よろしくお願いします。
ウエブマスター (日曜日, 28 2月 2021 17:38)
chanmikiさん
いらっしゃいませ!
コメントありがとうございます。
日付は更新日でモナドノックは20日にツアーしました。
慣れていないと迷うと思うので、メールいただければ私の地図を送りますよ!
ウエブマスター (日曜日, 28 2月 2021 17:28)
白州丸さん
長いことコメントに気付かずスミマセン
東京は大変ですよね。
ワカサギを食べさせてあげれないのが残念です。
大願成就の次の回、長女と岩洞湖に行きましたが、またしても大漁でした!
岩手は恵まれてますよ!
chanmiki (火曜日, 23 2月 2021 21:07)
初めてコメントします。同じ小学校区、同じピアノ教室だったTです。
数年前からこのブログを見つけて、感動!尊敬!たくさん学ばせて頂いています。
本日23日も、「岩神山から田代牧場へ」を真似っこしようと行ったのですが、雪が少なそうで止め、区界駅2番ホームからの牧野へ行こうかとホームまで行きました。迷って結局、桐の木沢山へ行ったのですが、「モナドノック」を見てびっくり!
でも本日23日じゃないですよね?天気から。
私も単身赴任で106号を使っていたので、北上高地の、しかも地形のプロの記事、とても興味深く読んでいます。もちろん地元雫石のもです!
白州丸 (土曜日, 09 1月 2021 21:04)
コロナ禍で気づく事も多く、人と接せず作業をする一次産業やステイホームで地元を考える機会も多苦なりそれが新しい日常と気づくかもしれません。地元愛と働く人に感謝¡¡
白州丸 (月曜日, 28 12月 2020 11:11)
コロナ禍で始まったこの1年、地表ををすっかり覆ってしまう新雪はしばし巷のゴタゴタも忘れさせてくれます。
白州丸 (木曜日, 10 10月 2019 16:45)
馬愛の結晶でしょうね!優しい表情が印象的です。
ウエブマスター (火曜日, 30 4月 2019 11:10)
徳永様
お久しぶりです!
コメント有難うございます!
丸森良かったですねー
雪もたっぷりで何よりでした。
そろそろクマさんがウロウロしているようです。先日大松倉で足跡を見ました。お互いに気を付けましょう!
いつか、ウロコでご一緒したいです!
徳永光保 (日曜日, 21 4月 2019 20:05)
以前 森林鉄道のツアーでお世話になりました徳永です。本日こちらで紹介されている丸森にうろこテレマークで行ってきました。雪もたっぷり残っていてブナの原生林の雰囲気もよく大変気に入りました。情報参考にさせていただきました。ありがとうございました。
ウエブマスター (日曜日, 22 4月 2018 19:07)
家の前の桜はまだですが、盛岡はすでに満開。テレマークはこれからが良い季節ですよ!
白州丸 (日曜日, 15 4月 2018 15:59)
今シーズンのテレマークもそろそろ終わり?桜も咲き始めましたあ?
ウエブマスター (土曜日, 07 5月 2016 12:18)
白州丸さま
宮古では恒例のuno大会も盛り上がりました!
旧道歩きは発見があって楽しいですね!
白州丸 (木曜日, 05 5月 2016 16:03)
1泊2日の宮古の充実した旅でしたね。女性3名を従え賑やかで大きな天候の崩れも無く良かったです。
白州丸 (日曜日, 06 3月 2016 10:50)
親子の協力、ほのぼのとして少ない成果でも美味しさがギュット詰まっている事でしょう。
ウエブマスター (日曜日, 10 1月 2016 11:41)
白州丸さま
ジムニーで薪運搬!
こういうのって、田舎暮らしならではの楽しさですね!
白州丸 (土曜日, 09 1月 2016 14:13)
有り難いプレゼント、ジムニー大活躍ですね!!
白州丸 (土曜日, 26 9月 2015 17:10)
手を加えた分だけ建物は答えてくれます、又達成感は喜びになるでしょう。
白州丸 (土曜日, 26 9月 2015)
父と娘の縦走、紅葉が綺麗ですね、山ガールも頑張りましたね!!
白州丸 (土曜日, 15 8月 2015 15:52)
見事に蘇りました、15年の歴史がしみ込んだテーブル作業中はいろんな思いも浮かんだ事でしょう。我が家は削って(多分電動鉋?)もらいましたが手作業はご苦労様でした。又新しい家族の歴史(汚れ?)が刻まれる事でしょう。帰ってきた家族もさぞびっくり!!
白州丸 (火曜日, 30 6月 2015 10:19)
テーブル完成おめでとうございます。ここ迄秋田杉を利用できれば樹も喜んでいる事でしょう。無垢板は存在感ありますね!!このテーブルからどんな作品が出来るか楽しみですね
ウエブマスター (日曜日, 17 5月 2015 12:24)
リタイヤじっちゃん様
丸森制覇、おめでとうございます!私はタイミングを逃し、今年は行けず残念でしたが、動画を拝見させていただき、行った気になれました!それにしてもクマにはビックリ!!
リタイヤじっちゃん (火曜日, 12 5月 2015 09:27)
ウエブマスターの丸森ツアー(2013.5.12)でアクセスルートを知ったのは昨年の夏ごろ、それから5月の連休が待ち遠しく長いものでした。途中熊さんの歓迎を受けましたが、楽しく登ることができました。情報ありがとうございました。来冬は須賀倉を頂戴します。(山行記録YouTube”丸森”)
ウエブマスター (水曜日, 29 4月 2015 07:49)
史実探偵さま、コメント有難うございます。なるほど!奥が深そうですねー。
史実探偵:平素人 (日曜日, 26 4月 2015 00:02)
はじめまして^^、ウエブ釜石鉱山で検索訪問しました。ホームのお写真を見て、これが私の広報する、『BC.2001年に地球を半周し東北へ降臨した巨大隕石の核!』 かと思うと胸のたかまりを覚えます。よろしかったら、myブログのカテゴリー;巨大隕石(5) &, 巨大津波(4)へ、どうぞ^^!
小岩 (日曜日, 05 10月 2014 14:24)
シロハヤブサの続編に期待・・豊かな発想に拍手を送ります。
小岩じいじ (日曜日, 05 10月 2014 14:16)
岩手の旅行記は風景写真の見事さと臨場感あふれる文章にいつも感心しています。次号を楽しみにしています。
小岩 (日曜日, 05 10月 2014 14:06)
泉ちゃん堂々の3位入賞おめでとう。又1つ話題ができましたね。来年は優勝目指して下さい。
リタイヤじっちゃん (日曜日, 05 10月 2014 10:09)
体力的に門馬コースは無理ですが、教えていただいた丸森には挑戦させて頂きます。尚、剣ヶ峰山行記録はyouTubeで公開してますがどなたとも知らず貴方の車ときのこ採りの3人には無料出演して頂いでおりますのであしからず。但し誰も見ませんが。(笑)
ウェブマスター (日曜日, 05 10月 2014 00:06)
いやはや!
ニアミスしていたわけですね、リタイヤじっちゃん様!やはり早池峰剣ヶ峰、いい山ですよねー!
今度は、門馬コースにも久々にチャレンジしたいと思っています!
リタイヤじっちゃん (水曜日, 01 10月 2014 18:16)
久しぶりに覗いて見てびっくりしました。9月15日早池峰剣ヶ峰で好青年と交差したことを覚えております。あの時の白髪親父がじっちゃんです。初めて登りましたがいい山でした。
ウェブマスター (土曜日, 07 6月 2014 22:03)
ritzさん、コメント有難うございます!
阿部館山良かったですよ!来年も絶対行きます!その時お会いするかもしれませんね!今後ともこの隠れ家的HPをよろしくお願い致します!
ritz (火曜日, 03 6月 2014 00:16)
はじめまして。
4/13阿部館山の記事拝見しました。素晴らしいところですね。
4月頭に櫃取湿原や青松葉山界隈を歩き(滑り)、斜面や森の雰囲気に感動しました。北上高地は初めて訪れましたが、また行ってみたいと思っています。
これからも岩手の山滑りの記録、楽しみにしています。