津軽鉄道は、今まで乗ったことのない鉄道のうち、是非乗ってみたい鉄道だった。
最大の理由は、「客車に乗れること」
冬の間は名物の「ストーブ列車」が運行され、そのために客車が連結される。
僕にとって、自宅で馴染みのストーブはあくまで“ついで”で、客車に乗れるのが最大の楽しみになる。
久慈から八戸線の初発列車に乗り、まずは八戸へ向かう。
小雪混じりの天気で、乗客は僕一人。
隣駅の陸中夏井でも乗客はなく、その次の侍浜でようやく一人。
青森県に入り、階上を過ぎても全部で10人未満という状況で、そんなこともあって、個人的に「乗って残そう八戸線運動」を展開している。
今日の行き帰りを含めれば、この1年間で8回利用したことになる。
今回も事前に購入しておいた「あおもりホリデーパス」を最大限に活用する。
久慈から津軽鉄道の起点となる五所川原まで、通常なら往復で9,260円かかるところ、2,520円で済んでしまう。
八戸で青い森鉄道に乗り換え、青森で奥羽本線に、さらに川部で五能線に乗り換えて五所川原に向かう。
久慈で降っていた雪はまもなく止み、野辺地付近では平地に積もっていた雪も、津軽平野に入ると解けてなくなり、やはり暖冬少雪だったことがうかがえる。
ただし、今日はこの時期としては寒く、幸いにもストーブ列車日和ということになる。
青い森鉄道の電車は平成26年に投入された新車703系で、快適なクロスシートでの旅になった。2編成しかない少数派で、僕も初めて乗ることができラッキーだった。
五能線の列車は令和2年に投入された新車のGV-E400という車両で、ディーゼルエンジンで発電し、モーターを駆動させる新方式で、ディーゼルカーと言っていいのかどうか分からない。
ステンレスの車体は一見味気ないけれど、側面にあしらったワンポイントのデザインが良いアクセントになっていた。内装がリニューアルされた弘前駅にも同じようなデザインが施されていたので、そのコンセプトを知りたいと思ったけれど、詳しいことは分からない。
五所川原駅到着は11時5分
まずは、隣接する津軽鉄道の津軽五所川原駅を内覧しようと一旦JRの五所川原駅を出る。
そして津軽五所川原駅及び、その隣にある津軽鉄道の本社建物を見て、そのレトロな雰囲気に驚く。まるで昭和の街並みのセットに来たようだ。
そして建物の中は、外観以上にレトロだった。
懐かしい黒板の伝言板や切符売り場。
切符は懐かしの硬券で売られていて、ストーブ列車が描かれたストーブ列車乗車券は良い記念になる。
売店にも様々な記念品が売られていて、津軽鉄道の支援につながればと、ストーブ列車が刺繍されたポーチを思わず購入してしまった。
列車の時間まで余裕があるので、あらかじめ調べておいた、五所川原駅前のバス待合所の中のそば屋へ向かう。
この中もレトロな雰囲気で、迷わず「じょんから蕎麦」と「マスのおにぎり」を注文する。
じょんから蕎麦は、具なしの天ぷら(天かすの塊り)、わらび、ナメコ、生卵、ワカメが入っていて、スープの旨さが胃袋に浸みた。
そして、腹ごしらえが済んだら、いよいよ津軽鉄道のストーブ列車だ。
ホームに降りて、その客車を目の当たりにし、懐かしい気持ちがこみ上げてくる。
デッキに上がり、扉のない貫通路や木の床を見て、感動する。
高校1年生の時、東京から北海道まで初めて青春18きっぷで旅した。
函館本線で小樽から函館に向かう列車は、まさにこの客車だった。
40年近く経て、またその体験をできるとは・・・
ストーブ間近の席は、正直、暑いぐらいで、近くには長くいられないほど。
車内にはスルメを炙るいい匂いが漂う。
窓枠も木製で、壁板も木製。
昭和23年製造という客車は、まさに“走る骨董品”だ。
ゆっくりとした走り、人の話し声以外にはレールのジョイント音と木製の窓枠がきしむ音だけで、モーターやエンジン音のない環境は新鮮ですらある。
今日は岩木山も雲に隠れ、農村地帯を走る景色は特段佳景とは言えないけれど、この客車に乗っているからこそ、印象深く映るから不思議だ。
僕は途中の金木で下車した。
元々は終点の津軽中里まで往復するつもりだったけど、直前になって太宰治の生家、斜陽館に行ってみたくなった。
旅の直前のひらめきは大抵“吉”とでる。
金木駅から斜陽館までは腹ごなしの散歩に丁度良い距離だった。
総ヒバ造りの建物の内部は、全くヒバの香りがしなかったのは意外だった。
治が子供の頃に遊んでいた座敷の襖に書かれた文章の中に、「斜陽」の文字が含まれていたのは、その後の作品との因果があるようで面白かった。
あっと言う間に金木での滞在時間は経過し、帰りもストーブ列車に乗車した。
車内は行きよりも空いていた。
添乗員さんの話しによれば、1〜2月は大変混雑し、こんなにゆったりと満喫はできなかったそうだ。僕は当初、2月に旅する予定だったのでラッキーだった。
ストーブ列車の乗車時間は長過ぎず短過ぎず、終点の津軽五所川原に到着した。
旅の醍醐味である非日常をこれほどまでに味わえる鉄道は他にない気がする。
来年もぜひ来ようと思う。
五所川原で五能線に乗り換え、一旦、弘前へ向かう。
列車接続の関係上、青森か弘前で時間を潰す必要があるのだけど、そんな時はいつも弘前を選んでしまう。
青森も思い出の地だけど、それは青函連絡船の存在が大きかったように感じる。
弘前は城下町であり瀟酒な建物も点在する街並みは歩いていて面白いし、津軽の象徴とも言える岩木山の存在は盛岡と似通って気持的に通じるものがあるのだ。
しかし、今回弘前に立ち寄るのは、単に夕食の弁当を調達するのが目的。
ネットで調べたらコスパの良い店で、弘前駅から歩いて行ける距離で、焼鳥弁当という珍しさに惹かれたのが理由だ。
そんな弁当屋に向かう途中、奥羽本線を越える跨道橋で、思いがけず前方に八甲田の山々が見えた。
今日は天気がそれほど良くはなく、これまで山々は雲に隠れていた中で、このタイミングで八甲田連峰の山頂まで望むことができたのは本当に幸運だ。
来月には今見ている頂にテレマークスキーで自分が登るわけで、突如身が引き締る思いがする。
跨道橋を下がっていくと、何となくいい匂いが風に乗ってしてくる。
ストーブ列車でのスルメを炙るのに近いけど、それとは違う匂いだ。
もしや焼鳥屋ではと辺りを探すと、窓を開け放った民家のような建物から煙が出ているのを発見する。
近づけば焼鳥屋に違いない。そしてようやく店の旗に気付く。
こんな住宅街でよくもまあモクモクと焼鳥の煙を出せる物だと思いつつ、店に近づいて中を見て衝撃だったのは、店主が津軽美人だったこと。
焼鳥屋=親爺をイメージしていたし、年齢も若い!
かわいい鶏の帽子を被りながら、一生懸命焼いている店主に、メガ盛り焼鳥弁当を注文すると、「15分ほど時間かかりますけどいいですか」と言われる。
そんなことも想定して余裕を持って来ているので待つことにした。
出来上がった弁当はホカホカで、できれば今すぐ食べたいけれど、八戸線に乗ってからなので、4時間以上後のお楽しみだ。
お供となる地酒は弘前と八戸の駅でゲットした。こういうのは列車の旅ならではの楽しみ方だと思う。
八戸線久慈行の最終列車は、鮫駅を出ると殆どの客がいなくなる。
クロスシートに座り車窓の夜景を眺めながら1本空ける。
そして待望の焼鳥弁当メガ盛にありつく。
8本入の焼鳥は様々な種類があった。
4時間以上経ったものの、ほのかに温もりも感じられ、焼鳥はもちろん、ご飯も美味しかった。津軽美人が作ってくれたと思うと尚更なのかもしれない。
そんな充実した旅も、久慈で下車したのは僕と他に一人だけで、ローカル線の現実は厳しい。
ウエブマスター (木曜日, 22 7月 2021 15:34)
昔の列車旅は、移動中も面白味がありました。駅にも「名所案内」の看板があり、駅名表示の下にも「●●郡●●村」とか書いてあるのが好きでした。
白州丸 (土曜日, 17 7月 2021 15:24)
宮城〜岩手〜秋田〜青森と東北縦横断の旅堪能しました。沿線の温泉に入りたい!
画像加工いいですね!!
ウエブマスター (金曜日, 16 7月 2021 23:49)
私が描いたと言いたいところですが、撮った写真を加工したんですよー
でも、文字は女流書家 泉に依頼したものです!
白州丸 (水曜日, 14 7月 2021 16:46)
産業と共に生きた雫駅の歴史が分かります。駅舎のスケッチも良いですが因みに誰のタッチ?
ウエブマスター (土曜日, 13 3月 2021 11:08)
徳永さん、了解しました!
ウエブマスターまでメールいただければ地図を返信いたします!
徳永光保 (金曜日, 12 3月 2021 07:33)
前山の記事 拝見しました。
西和賀方面にこの時期にいけるところを探していたので興味があります。だいたい見当はつくのですが
もしよろしかったらルートの地図をいただけないでしょうか。よろしくお願いします。
ウエブマスター (日曜日, 28 2月 2021 17:38)
chanmikiさん
いらっしゃいませ!
コメントありがとうございます。
日付は更新日でモナドノックは20日にツアーしました。
慣れていないと迷うと思うので、メールいただければ私の地図を送りますよ!
ウエブマスター (日曜日, 28 2月 2021 17:28)
白州丸さん
長いことコメントに気付かずスミマセン
東京は大変ですよね。
ワカサギを食べさせてあげれないのが残念です。
大願成就の次の回、長女と岩洞湖に行きましたが、またしても大漁でした!
岩手は恵まれてますよ!
chanmiki (火曜日, 23 2月 2021 21:07)
初めてコメントします。同じ小学校区、同じピアノ教室だったTです。
数年前からこのブログを見つけて、感動!尊敬!たくさん学ばせて頂いています。
本日23日も、「岩神山から田代牧場へ」を真似っこしようと行ったのですが、雪が少なそうで止め、区界駅2番ホームからの牧野へ行こうかとホームまで行きました。迷って結局、桐の木沢山へ行ったのですが、「モナドノック」を見てびっくり!
でも本日23日じゃないですよね?天気から。
私も単身赴任で106号を使っていたので、北上高地の、しかも地形のプロの記事、とても興味深く読んでいます。もちろん地元雫石のもです!
白州丸 (土曜日, 09 1月 2021 21:04)
コロナ禍で気づく事も多く、人と接せず作業をする一次産業やステイホームで地元を考える機会も多苦なりそれが新しい日常と気づくかもしれません。地元愛と働く人に感謝¡¡
白州丸 (月曜日, 28 12月 2020 11:11)
コロナ禍で始まったこの1年、地表ををすっかり覆ってしまう新雪はしばし巷のゴタゴタも忘れさせてくれます。
白州丸 (木曜日, 10 10月 2019 16:45)
馬愛の結晶でしょうね!優しい表情が印象的です。
ウエブマスター (火曜日, 30 4月 2019 11:10)
徳永様
お久しぶりです!
コメント有難うございます!
丸森良かったですねー
雪もたっぷりで何よりでした。
そろそろクマさんがウロウロしているようです。先日大松倉で足跡を見ました。お互いに気を付けましょう!
いつか、ウロコでご一緒したいです!
徳永光保 (日曜日, 21 4月 2019 20:05)
以前 森林鉄道のツアーでお世話になりました徳永です。本日こちらで紹介されている丸森にうろこテレマークで行ってきました。雪もたっぷり残っていてブナの原生林の雰囲気もよく大変気に入りました。情報参考にさせていただきました。ありがとうございました。
ウエブマスター (日曜日, 22 4月 2018 19:07)
家の前の桜はまだですが、盛岡はすでに満開。テレマークはこれからが良い季節ですよ!
白州丸 (日曜日, 15 4月 2018 15:59)
今シーズンのテレマークもそろそろ終わり?桜も咲き始めましたあ?
ウエブマスター (土曜日, 07 5月 2016 12:18)
白州丸さま
宮古では恒例のuno大会も盛り上がりました!
旧道歩きは発見があって楽しいですね!
白州丸 (木曜日, 05 5月 2016 16:03)
1泊2日の宮古の充実した旅でしたね。女性3名を従え賑やかで大きな天候の崩れも無く良かったです。
白州丸 (日曜日, 06 3月 2016 10:50)
親子の協力、ほのぼのとして少ない成果でも美味しさがギュット詰まっている事でしょう。
ウエブマスター (日曜日, 10 1月 2016 11:41)
白州丸さま
ジムニーで薪運搬!
こういうのって、田舎暮らしならではの楽しさですね!
白州丸 (土曜日, 09 1月 2016 14:13)
有り難いプレゼント、ジムニー大活躍ですね!!
白州丸 (土曜日, 26 9月 2015 17:10)
手を加えた分だけ建物は答えてくれます、又達成感は喜びになるでしょう。
白州丸 (土曜日, 26 9月 2015)
父と娘の縦走、紅葉が綺麗ですね、山ガールも頑張りましたね!!
白州丸 (土曜日, 15 8月 2015 15:52)
見事に蘇りました、15年の歴史がしみ込んだテーブル作業中はいろんな思いも浮かんだ事でしょう。我が家は削って(多分電動鉋?)もらいましたが手作業はご苦労様でした。又新しい家族の歴史(汚れ?)が刻まれる事でしょう。帰ってきた家族もさぞびっくり!!
白州丸 (火曜日, 30 6月 2015 10:19)
テーブル完成おめでとうございます。ここ迄秋田杉を利用できれば樹も喜んでいる事でしょう。無垢板は存在感ありますね!!このテーブルからどんな作品が出来るか楽しみですね
ウエブマスター (日曜日, 17 5月 2015 12:24)
リタイヤじっちゃん様
丸森制覇、おめでとうございます!私はタイミングを逃し、今年は行けず残念でしたが、動画を拝見させていただき、行った気になれました!それにしてもクマにはビックリ!!
リタイヤじっちゃん (火曜日, 12 5月 2015 09:27)
ウエブマスターの丸森ツアー(2013.5.12)でアクセスルートを知ったのは昨年の夏ごろ、それから5月の連休が待ち遠しく長いものでした。途中熊さんの歓迎を受けましたが、楽しく登ることができました。情報ありがとうございました。来冬は須賀倉を頂戴します。(山行記録YouTube”丸森”)
ウエブマスター (水曜日, 29 4月 2015 07:49)
史実探偵さま、コメント有難うございます。なるほど!奥が深そうですねー。
史実探偵:平素人 (日曜日, 26 4月 2015 00:02)
はじめまして^^、ウエブ釜石鉱山で検索訪問しました。ホームのお写真を見て、これが私の広報する、『BC.2001年に地球を半周し東北へ降臨した巨大隕石の核!』 かと思うと胸のたかまりを覚えます。よろしかったら、myブログのカテゴリー;巨大隕石(5) &, 巨大津波(4)へ、どうぞ^^!
小岩 (日曜日, 05 10月 2014 14:24)
シロハヤブサの続編に期待・・豊かな発想に拍手を送ります。
小岩じいじ (日曜日, 05 10月 2014 14:16)
岩手の旅行記は風景写真の見事さと臨場感あふれる文章にいつも感心しています。次号を楽しみにしています。
小岩 (日曜日, 05 10月 2014 14:06)
泉ちゃん堂々の3位入賞おめでとう。又1つ話題ができましたね。来年は優勝目指して下さい。
リタイヤじっちゃん (日曜日, 05 10月 2014 10:09)
体力的に門馬コースは無理ですが、教えていただいた丸森には挑戦させて頂きます。尚、剣ヶ峰山行記録はyouTubeで公開してますがどなたとも知らず貴方の車ときのこ採りの3人には無料出演して頂いでおりますのであしからず。但し誰も見ませんが。(笑)
ウェブマスター (日曜日, 05 10月 2014 00:06)
いやはや!
ニアミスしていたわけですね、リタイヤじっちゃん様!やはり早池峰剣ヶ峰、いい山ですよねー!
今度は、門馬コースにも久々にチャレンジしたいと思っています!
リタイヤじっちゃん (水曜日, 01 10月 2014 18:16)
久しぶりに覗いて見てびっくりしました。9月15日早池峰剣ヶ峰で好青年と交差したことを覚えております。あの時の白髪親父がじっちゃんです。初めて登りましたがいい山でした。
ウェブマスター (土曜日, 07 6月 2014 22:03)
ritzさん、コメント有難うございます!
阿部館山良かったですよ!来年も絶対行きます!その時お会いするかもしれませんね!今後ともこの隠れ家的HPをよろしくお願い致します!
ritz (火曜日, 03 6月 2014 00:16)
はじめまして。
4/13阿部館山の記事拝見しました。素晴らしいところですね。
4月頭に櫃取湿原や青松葉山界隈を歩き(滑り)、斜面や森の雰囲気に感動しました。北上高地は初めて訪れましたが、また行ってみたいと思っています。
これからも岩手の山滑りの記録、楽しみにしています。