slow life

遠島山(2024.4.6)

遠島山は久慈市と岩泉町の境にある山で、地形図に登山道は記されていないものの、実際には登山道が整備された山だ。

標高は1,262mあり、北上高地の山としては高い山だけど、県内の山の中でも知名度は低い山だと思う。

それは盛岡などからのアクセスが悪く、無理して登りに行くほどの特徴もないと思われがちだからではないだろうか。

実際、遠島山の姿をすぐにイメージできる人は久慈市民でもそう多くはないだろう。

それは、突出して高い山ではない上に、比較的奥まった場所に位置するため、周辺の山に隠れてしまうためだ。

しかし、久慈市内の県立久慈病院付近から望むその特徴的な山容は、「一度は登ってみたい」と感じるような存在感のある山だ。

長く緩やかな稜線は、冬の時期は真っ先に雪化粧するため、特に美しい。

 

そんな遠島山に、まだ雪の残る時期にあえて登ってみた。

この山は、登山口の内間木から山小屋のある四合目付近まで作業道が通じており、雪のない時期だと車と出くわす可能性があるからだ。

美しい山は、徒歩でゆっくりと、そして静寂も楽しみたい。

 

3月初めに記録的な大雪が降った久慈市も、さすがに市街地周辺の雪は消え、滝ダム周辺の山の雪も完全に消えた。

しかし、県道7号から29号に入り、さらにそこから分かれて内間木に向かう市道に入った途端に雪が残るようになった。

同じ久慈市内で、市街地からそお遠くは離れていないのに、このギャップは意外だった。

 

登山口となる内間木は鍾乳洞があることで知られるが、今日は閉洞していて周囲に人気はない。

駐車された車もなく、登山者もいないようだ。

身支度を整え、林道を歩き始めて間もなく、路面が雪で覆われるようになった。

すかさず革靴に軽アイゼンを装着する。

締まった雪を踏みしめる音と共に、リズム良く一歩一歩踏み出すのは、とても清々しい気持ちだ。

車を止めた場所から少し歩くと、林道はこのような状況に
(車を止めた場所から少し歩くと、林道はこのような状況に)
革靴に軽アイゼンとショートスパッツを装着する
(革靴に軽アイゼンとショートスパッツを装着する)

三合目を過ぎた辺りから勾配が急になり、道はつづら折りで、雪の量も格段に増えてくる。

樹冠越しに空が見え、鞍部に近いことが感じられるようになると、まもなく遠島山荘という山小屋のある場所に到達する。

遠島山荘は、造成された大きな広場の端に建っていて、ロケーション的に今ひとつだけれど、建物自体は木造の立派な山荘だ。

この山荘だけを見ても、少なくとも久慈市民にとって遠島山は、ポピュラーな山であることが分かる。

 

山荘を過ぎて間もなく鞍部出ると、すぐに四合目の表示があり、この先は比較的急な尾根がしばらく続く。

尾根と言っても幅が広く、樹林帯なため展望は効かないがコナラの巨木が点在する雰囲気の良い尾根だ。

だいぶ前にスノーシューで歩いた痕跡があるが、冬季の登山者はごく僅かなようだ。

遠島山荘
(遠島山荘)
遠島山荘の内部
(遠島山荘の内部)
四合目を過ぎて、広い尾根にコナラの巨木が出現する
(四合目を過ぎて、広い尾根にコナラの巨木が出現する)

標高が高くなるに従って、樹林越しに見える周囲の山々が目線の下になり、それらの山々との残雪量の違いから、この山が一種特別な存在であるかのように感じる。

標高1,000mを越えた辺りから尾根は尾根らしい狭さになり、ブナなども見られるようになる。

八合目付近まで登ると、樹林越しに天神森が見え、頂上が近いことを感じる。

樹木にもモミが混じるようになり植生の変化が感じられる。

 

九合目の表示は気付かないまま登り続け、前方に立派な五葉松が見えると、突如そこはもう遠島山の山頂だった。

山頂からは東方向の眺めが抜群で、なだらかな山の連なりの向こうに太平洋が見え、その景色の中にあって、和佐羅比山の姿は目立っていた。

三角点からは樹林越しに遠別岳らしき山が見えた。

山頂は南北に長く、その南端からは、南方向の眺望が素晴らしかった。

手前には天神森へと連なる稜線が樹海のように横たわり、遠方には岩手山を始め、姫神山、早池峰山、峠の神山と思われる山などを望み、北上高地の雄大さを体感できる。

山頂の南端には露岩があり、座ってお弁当を広げるのに丁度良かった。

標高が上がるに連れ、ブナが見られるようになる
(標高が上がるに連れ、ブナが見られるようになる)
八合目辺りから樹林越しに天神森方面が見える
(八合目辺りから樹林越しに天神森方面が見える)
遠島山山頂の三角点
(遠島山山頂の三角点)
山頂から東側、太平洋と和佐羅比山を望む
(山頂から東側、太平洋と和佐羅比山を望む)
山頂南端から天神森方面を望む
(山頂南端から天神森方面を望む)
山頂南端の露岩に座って弁当を食べる
(山頂南端の露岩に座って弁当を食べる)

下山は同じルートを辿る。

気温が高いため、朝方はつぼ足で快適に歩けた道も、林道に入ってからは靴が雪に潜って歩きづらかった。

下山後は、ほぼ経路上にある新山根温泉「べっぴんの湯」に寄り道して汗を流す。

pH10を超える強アルカリ性の冷泉を木質バイオマスボイラーで加熱したもので、令和5年春にリニューアルオープンしたばかりだ。

広い内風呂のほか、サウナや露天風呂もあり、露天風呂は貸切状態で気持ち良かった。

温泉でサッパリして、あとは久慈市街地の家まで戻るだけだが、ちょっと寄り道して県立久慈病院付近から、今日登った遠島山を写真に収めた。

遠島山は見た目も、登ってみても良い山だと分かった。

今度は、来シーズンにテレマークスキーで訪れてみたいと、新たな目標ができた。

下山後は新山根温泉べっぴんの湯で汗を流した
(下山後は新山根温泉べっぴんの湯で汗を流した)
県立久慈病院付近から眺める遠島山の特徴的な姿
(県立久慈病院付近から眺める遠島山の特徴的な姿)
コメント: 37
  • #37

    ウエブマスター (木曜日, 22 7月 2021 15:34)

    昔の列車旅は、移動中も面白味がありました。駅にも「名所案内」の看板があり、駅名表示の下にも「●●郡●●村」とか書いてあるのが好きでした。

  • #36

    白州丸 (土曜日, 17 7月 2021 15:24)

    宮城〜岩手〜秋田〜青森と東北縦横断の旅堪能しました。沿線の温泉に入りたい!
    画像加工いいですね!!

  • #35

    ウエブマスター (金曜日, 16 7月 2021 23:49)

    私が描いたと言いたいところですが、撮った写真を加工したんですよー
    でも、文字は女流書家 泉に依頼したものです!

  • #34

    白州丸 (水曜日, 14 7月 2021 16:46)

    産業と共に生きた雫駅の歴史が分かります。駅舎のスケッチも良いですが因みに誰のタッチ?

  • #33

    ウエブマスター (土曜日, 13 3月 2021 11:08)

    徳永さん、了解しました!
    ウエブマスターまでメールいただければ地図を返信いたします!

  • #32

    徳永光保 (金曜日, 12 3月 2021 07:33)

    前山の記事 拝見しました。
    西和賀方面にこの時期にいけるところを探していたので興味があります。だいたい見当はつくのですが
    もしよろしかったらルートの地図をいただけないでしょうか。よろしくお願いします。

  • #31

    ウエブマスター (日曜日, 28 2月 2021 17:38)

    chanmikiさん
    いらっしゃいませ!
    コメントありがとうございます。
    日付は更新日でモナドノックは20日にツアーしました。
    慣れていないと迷うと思うので、メールいただければ私の地図を送りますよ!

  • #30

    ウエブマスター (日曜日, 28 2月 2021 17:28)

    白州丸さん
    長いことコメントに気付かずスミマセン
    東京は大変ですよね。
    ワカサギを食べさせてあげれないのが残念です。
    大願成就の次の回、長女と岩洞湖に行きましたが、またしても大漁でした!
    岩手は恵まれてますよ!

  • #29

    chanmiki (火曜日, 23 2月 2021 21:07)

    初めてコメントします。同じ小学校区、同じピアノ教室だったTです。
    数年前からこのブログを見つけて、感動!尊敬!たくさん学ばせて頂いています。
    本日23日も、「岩神山から田代牧場へ」を真似っこしようと行ったのですが、雪が少なそうで止め、区界駅2番ホームからの牧野へ行こうかとホームまで行きました。迷って結局、桐の木沢山へ行ったのですが、「モナドノック」を見てびっくり!
    でも本日23日じゃないですよね?天気から。
    私も単身赴任で106号を使っていたので、北上高地の、しかも地形のプロの記事、とても興味深く読んでいます。もちろん地元雫石のもです!

  • #28

    白州丸 (土曜日, 09 1月 2021 21:04)

    コロナ禍で気づく事も多く、人と接せず作業をする一次産業やステイホームで地元を考える機会も多苦なりそれが新しい日常と気づくかもしれません。地元愛と働く人に感謝¡¡

  • #27

    白州丸 (月曜日, 28 12月 2020 11:11)

    コロナ禍で始まったこの1年、地表ををすっかり覆ってしまう新雪はしばし巷のゴタゴタも忘れさせてくれます。

  • #26

    白州丸 (木曜日, 10 10月 2019 16:45)

    馬愛の結晶でしょうね!優しい表情が印象的です。

  • #25

    ウエブマスター (火曜日, 30 4月 2019 11:10)

    徳永様
    お久しぶりです!
    コメント有難うございます!
    丸森良かったですねー
    雪もたっぷりで何よりでした。
    そろそろクマさんがウロウロしているようです。先日大松倉で足跡を見ました。お互いに気を付けましょう!
    いつか、ウロコでご一緒したいです!

  • #24

    徳永光保 (日曜日, 21 4月 2019 20:05)

    以前 森林鉄道のツアーでお世話になりました徳永です。本日こちらで紹介されている丸森にうろこテレマークで行ってきました。雪もたっぷり残っていてブナの原生林の雰囲気もよく大変気に入りました。情報参考にさせていただきました。ありがとうございました。

  • #23

    ウエブマスター (日曜日, 22 4月 2018 19:07)

    家の前の桜はまだですが、盛岡はすでに満開。テレマークはこれからが良い季節ですよ!

  • #22

    白州丸 (日曜日, 15 4月 2018 15:59)

    今シーズンのテレマークもそろそろ終わり?桜も咲き始めましたあ?

  • #21

    ウエブマスター (土曜日, 07 5月 2016 12:18)

    白州丸さま
    宮古では恒例のuno大会も盛り上がりました!
    旧道歩きは発見があって楽しいですね!

  • #20

    白州丸 (木曜日, 05 5月 2016 16:03)

    1泊2日の宮古の充実した旅でしたね。女性3名を従え賑やかで大きな天候の崩れも無く良かったです。

  • #19

    白州丸 (日曜日, 06 3月 2016 10:50)

    親子の協力、ほのぼのとして少ない成果でも美味しさがギュット詰まっている事でしょう。

  • #18

    ウエブマスター (日曜日, 10 1月 2016 11:41)

    白州丸さま
    ジムニーで薪運搬!
    こういうのって、田舎暮らしならではの楽しさですね!

  • #17

    白州丸 (土曜日, 09 1月 2016 14:13)

    有り難いプレゼント、ジムニー大活躍ですね!!

  • #16

    白州丸 (土曜日, 26 9月 2015 17:10)

    手を加えた分だけ建物は答えてくれます、又達成感は喜びになるでしょう。

  • #15

    白州丸 (土曜日, 26 9月 2015)

    父と娘の縦走、紅葉が綺麗ですね、山ガールも頑張りましたね!!

  • #14

    白州丸 (土曜日, 15 8月 2015 15:52)

    見事に蘇りました、15年の歴史がしみ込んだテーブル作業中はいろんな思いも浮かんだ事でしょう。我が家は削って(多分電動鉋?)もらいましたが手作業はご苦労様でした。又新しい家族の歴史(汚れ?)が刻まれる事でしょう。帰ってきた家族もさぞびっくり!!

  • #13

    白州丸 (火曜日, 30 6月 2015 10:19)

    テーブル完成おめでとうございます。ここ迄秋田杉を利用できれば樹も喜んでいる事でしょう。無垢板は存在感ありますね!!このテーブルからどんな作品が出来るか楽しみですね

  • #12

    ウエブマスター (日曜日, 17 5月 2015 12:24)

    リタイヤじっちゃん様
    丸森制覇、おめでとうございます!私はタイミングを逃し、今年は行けず残念でしたが、動画を拝見させていただき、行った気になれました!それにしてもクマにはビックリ!!

  • #11

    リタイヤじっちゃん (火曜日, 12 5月 2015 09:27)

    ウエブマスターの丸森ツアー(2013.5.12)でアクセスルートを知ったのは昨年の夏ごろ、それから5月の連休が待ち遠しく長いものでした。途中熊さんの歓迎を受けましたが、楽しく登ることができました。情報ありがとうございました。来冬は須賀倉を頂戴します。(山行記録YouTube”丸森”)

  • #10

    ウエブマスター (水曜日, 29 4月 2015 07:49)

    史実探偵さま、コメント有難うございます。なるほど!奥が深そうですねー。

  • #9

    史実探偵:平素人 (日曜日, 26 4月 2015 00:02)

    はじめまして^^、ウエブ釜石鉱山で検索訪問しました。ホームのお写真を見て、これが私の広報する、『BC.2001年に地球を半周し東北へ降臨した巨大隕石の核!』 かと思うと胸のたかまりを覚えます。よろしかったら、myブログのカテゴリー;巨大隕石(5) &, 巨大津波(4)へ、どうぞ^^!

  • #8

    小岩 (日曜日, 05 10月 2014 14:24)

    シロハヤブサの続編に期待・・豊かな発想に拍手を送ります。

  • #7

    小岩じいじ (日曜日, 05 10月 2014 14:16)

    岩手の旅行記は風景写真の見事さと臨場感あふれる文章にいつも感心しています。次号を楽しみにしています。

  • #6

    小岩 (日曜日, 05 10月 2014 14:06)

    泉ちゃん堂々の3位入賞おめでとう。又1つ話題ができましたね。来年は優勝目指して下さい。

  • #5

    リタイヤじっちゃん (日曜日, 05 10月 2014 10:09)

    体力的に門馬コースは無理ですが、教えていただいた丸森には挑戦させて頂きます。尚、剣ヶ峰山行記録はyouTubeで公開してますがどなたとも知らず貴方の車ときのこ採りの3人には無料出演して頂いでおりますのであしからず。但し誰も見ませんが。(笑)

  • #4

    ウェブマスター (日曜日, 05 10月 2014 00:06)

    いやはや!
    ニアミスしていたわけですね、リタイヤじっちゃん様!やはり早池峰剣ヶ峰、いい山ですよねー!
    今度は、門馬コースにも久々にチャレンジしたいと思っています!

  • #3

    リタイヤじっちゃん  (水曜日, 01 10月 2014 18:16)

    久しぶりに覗いて見てびっくりしました。9月15日早池峰剣ヶ峰で好青年と交差したことを覚えております。あの時の白髪親父がじっちゃんです。初めて登りましたがいい山でした。

  • #2

    ウェブマスター (土曜日, 07 6月 2014 22:03)

    ritzさん、コメント有難うございます!
    阿部館山良かったですよ!来年も絶対行きます!その時お会いするかもしれませんね!今後ともこの隠れ家的HPをよろしくお願い致します!

  • #1

    ritz (火曜日, 03 6月 2014 00:16)

    はじめまして。
    4/13阿部館山の記事拝見しました。素晴らしいところですね。
    4月頭に櫃取湿原や青松葉山界隈を歩き(滑り)、斜面や森の雰囲気に感動しました。北上高地は初めて訪れましたが、また行ってみたいと思っています。
    これからも岩手の山滑りの記録、楽しみにしています。