丸森(1,329m)は雫石盆地を臨む奥羽山脈の前衛に位置する登山道のない山だ。
雫石スキー場のある高倉山の左隣にあり、雫石盆地からすごく目立つ存在ではある。
そんな丸森は、テレマークスキーを使えば容易にその山頂に立つことができる。
しかし、高畑牧野までの農道が雪解けした直後の期間限定に限られる。
今年は異常なまでの暖冬少雪で、平地の雪解けが早いだけでなく、県境の奥羽山脈を眺めても、いつもに比べ雪がでこぼこしていて、積雪自体かなり少ないのが分かる。
「今シーズンはかなり幕引きが早くなりそうだな、まだ1回しかツアーしていないのに」そんなことをボヤきつつ、「今年は丸森ツアーのチャンスかもしれない」とひらめいた。
そこで、とりあえず農道の雪解け具合を偵察に行った。
案の定、雪解けが進み、除雪作業も行われているようで、偵察は途中でやめて折り返してきたけれど、例年より早く通行できそうだと判断した。
そして翌週に、3度目となる丸森ツアーを決行した。
登山口の高畑牧野までの農道は見込み通り完全に除雪されていた。
しかし、周辺の農地にはちゃんと雪が残っていた。
過去に丸森ツアーをしていた時期なら農地の雪は解けていたけれど、標高が720mもあるだけに、まだ自然融雪はしなかったようだ。実は今回のツアーではこの辺りの雪の残り具合が重要なポイントだ。
高畑牧野を抜けると、すぐに国有林道にでる。
林道もしっかり雪に覆われていた。
この先、丸森の尾根入口までこの林道を辿ることになるが、過去2回のツアーでは、農地はもとより林道も断続的に雪が途切れ、徒歩を余儀なくされた。
今回はその必要もなさそうで、「今年はチャンス」との読みは当たったようだ。
長い林道歩きもステップソールなら苦にならない。
スキーの着脱も今回は必要ないのでなおさら快適だ。
高倉橋で荒沢源流を渡る。
清冽な荒沢の流れはストレスも洗い流してくれるようだ。
今回は丸森を登頂したあと、その先の三角山まで足を延ばす予定で、そこは荒沢の源頭部に当る。
荒沢右岸に渡り登り勾配を進むと、高倉山の尾根越しに岩手山の頂上が顔を出す。
そこを過ぎてすぐのカーブを曲がったところが尾根の入口だ。
ここで小休止して、いよいよバックカントリーに入る。
尾根は登るにつれて斜度を増していく。
それとともに林相もホオノキ、ダケカンバなどからブナ純林に変化していく。
南向きの尾根は日射しをまともに受け、雪もかなり重くなってくる。
今回はシールを着けずにステップソールだけで登っているけれど、それでも雪の重さで足にはこたえる。
今シーズン2度目というツアーブランクもあるだろう。
このコースはなるべく早立ちした方がいいようだ。
昼前には丸森山頂に到達した。
奥羽山脈の前衛だけに、展望の良さは比類ない。
早池峰山、秋田駒ヶ岳、和賀山塊。高倉山の山頂の背後にはわずかながら岩手山が見える。
そして裏岩手連峰。
しかし、何といっても横岳から烏帽子岳に至る大雪原のスケールが圧巻だ。ここに立たないと見れない絶景は日本の「オートルート」と言っていいだろう。
で、今回はそのオートルートの一部に足を踏み入れるべく、この先の三角山まで向かう。
三角山(1,418m)は、かつて千沼ケ原からの登山道があったが廃道化され、数年前には雫石ゴンドラから夏道が再開されたが、現在はゴンドラ自体運行されなくなり、実質登山道のない山になっている。
自分は夏に一度登ったことがあるけれど、テレマークスキーで行くのは初めてで念願の一つでもあった。
丸森の山頂でお菓子を食べて小休止し、いよいよ三角山へのオートルートに一歩踏み入れる。
鞍部付近からアオモリトドマツが出現し、これまでとは雰囲気が変わって八幡平のそれと近くなる。
小ピークを越えると、いよいよ眼前に三角山が迫る。
なだらかな山容は北上高地の阿部館山に似ている。
山頂直下には美味しそうな斜面が広がっているが、ここは要注意だ。
前回、丸森ツアーした時に、ここで大雪崩を確認したからだ。
その記憶を重ねながら、下山時のルートを検討しておく。
間違ってもボウルには入らないようにしたい。
丸森から近くに見えた三角山も、実際歩いてみると意外に時間がかかった。
最後のダラダラ登りが足にこたえる。
しかし、右手に見える岩手山の絶景が励ましてくれる。
それに冬初登頂のワクワク感は高まるばかりだ。
ハイマツが目立つようになり、そして遂に三角山の頂上に立った。
正面に見える笊森山は、そのスケールと雪の斜面の陰影が、環境の厳しさとその中にある美しさを同時に表現しているようで、僕はそれにしばし魅入った。
もちろん秋田駒ヶ岳の屹立する山峰群も人の気配が排除されたこの時期は原生的な魅力を放っていた。
僕は、これだけのスケールの眺望の中に人工物がほとんどないという、そういう場所に今いることに、こころから満足した。
三角山には三角点はあったけれど、山名を示す標識は一切なかった。
ただ、残骸らしき支柱はあった。
振り返れば丸森が見えるが、雫石盆地から見る姿とはだいぶ異なる。
ちなみに、かつて丸森は荒澤ケ嶽と呼ばれ、高倉山はモッコ森、小高倉山はサイナイ森と呼ばれていた。かつての名称の方が雰囲気が良く、地理的にもあっているように思う。
その点、三角山(ミカドヤマ)だけはその由来が今一つハッキリしない。
山頂に立てば新たな理由が分かるかとも期待したが、それはなかった。
“雫石盆地から見た時に、丸森と高倉山の間に、角だけ見える(ように見える)山だから”というのが、現時点での僕の推測だ。
三角山山頂で笊森山を眺めながらゆっくりと昼食をとる。
かつて千沼ケ原から藪を掻き分けて登ったことを思い出しながらその方向を見ていると、千沼ケ原の外れに一際大きなダケカンバがあることに気付いた。
過酷な環境の中、雪崩にもめげず、周囲の樹木に比べ一際大きなその存在は、まさに奇跡のダケカンバと言っていいのではないか。
そんな地味な発見も楽しいものだ。
十分に山頂を満喫して、いよいよ滑降体制に入る。
三角山山頂直下は、事前にルート検討した通り、ボウルは避けて尾根地形を選んで滑降する。
距離は短いけれど、無立木バーンを滑降するのは気分がいい。
丸森から先は樹林帯の滑降だ。
重たい湿雪は下るにつれて条件が悪くなった。
それでも初めのうちはツリーランを楽しめたけれど、次第に樹林も濃くなり苦戦を強いられた。
林道に出てからはステップソールの機動力を発揮する。ステップソールなら歩きだって楽しい。
林道から高畑牧野まではカラマツ植林地を滑降した。
これまでなら雪がなく歩いていた区間だ。
植林地は隙間も十分で雪質も樹林帯ほど悪くなく、気持ち良くターンできた。
お陰で滑りも後味良く、今シーズンのツアー不足を補うような充実したツアーとなった。
ウエブマスター (木曜日, 22 7月 2021 15:34)
昔の列車旅は、移動中も面白味がありました。駅にも「名所案内」の看板があり、駅名表示の下にも「●●郡●●村」とか書いてあるのが好きでした。
白州丸 (土曜日, 17 7月 2021 15:24)
宮城〜岩手〜秋田〜青森と東北縦横断の旅堪能しました。沿線の温泉に入りたい!
画像加工いいですね!!
ウエブマスター (金曜日, 16 7月 2021 23:49)
私が描いたと言いたいところですが、撮った写真を加工したんですよー
でも、文字は女流書家 泉に依頼したものです!
白州丸 (水曜日, 14 7月 2021 16:46)
産業と共に生きた雫駅の歴史が分かります。駅舎のスケッチも良いですが因みに誰のタッチ?
ウエブマスター (土曜日, 13 3月 2021 11:08)
徳永さん、了解しました!
ウエブマスターまでメールいただければ地図を返信いたします!
徳永光保 (金曜日, 12 3月 2021 07:33)
前山の記事 拝見しました。
西和賀方面にこの時期にいけるところを探していたので興味があります。だいたい見当はつくのですが
もしよろしかったらルートの地図をいただけないでしょうか。よろしくお願いします。
ウエブマスター (日曜日, 28 2月 2021 17:38)
chanmikiさん
いらっしゃいませ!
コメントありがとうございます。
日付は更新日でモナドノックは20日にツアーしました。
慣れていないと迷うと思うので、メールいただければ私の地図を送りますよ!
ウエブマスター (日曜日, 28 2月 2021 17:28)
白州丸さん
長いことコメントに気付かずスミマセン
東京は大変ですよね。
ワカサギを食べさせてあげれないのが残念です。
大願成就の次の回、長女と岩洞湖に行きましたが、またしても大漁でした!
岩手は恵まれてますよ!
chanmiki (火曜日, 23 2月 2021 21:07)
初めてコメントします。同じ小学校区、同じピアノ教室だったTです。
数年前からこのブログを見つけて、感動!尊敬!たくさん学ばせて頂いています。
本日23日も、「岩神山から田代牧場へ」を真似っこしようと行ったのですが、雪が少なそうで止め、区界駅2番ホームからの牧野へ行こうかとホームまで行きました。迷って結局、桐の木沢山へ行ったのですが、「モナドノック」を見てびっくり!
でも本日23日じゃないですよね?天気から。
私も単身赴任で106号を使っていたので、北上高地の、しかも地形のプロの記事、とても興味深く読んでいます。もちろん地元雫石のもです!
白州丸 (土曜日, 09 1月 2021 21:04)
コロナ禍で気づく事も多く、人と接せず作業をする一次産業やステイホームで地元を考える機会も多苦なりそれが新しい日常と気づくかもしれません。地元愛と働く人に感謝¡¡
白州丸 (月曜日, 28 12月 2020 11:11)
コロナ禍で始まったこの1年、地表ををすっかり覆ってしまう新雪はしばし巷のゴタゴタも忘れさせてくれます。
白州丸 (木曜日, 10 10月 2019 16:45)
馬愛の結晶でしょうね!優しい表情が印象的です。
ウエブマスター (火曜日, 30 4月 2019 11:10)
徳永様
お久しぶりです!
コメント有難うございます!
丸森良かったですねー
雪もたっぷりで何よりでした。
そろそろクマさんがウロウロしているようです。先日大松倉で足跡を見ました。お互いに気を付けましょう!
いつか、ウロコでご一緒したいです!
徳永光保 (日曜日, 21 4月 2019 20:05)
以前 森林鉄道のツアーでお世話になりました徳永です。本日こちらで紹介されている丸森にうろこテレマークで行ってきました。雪もたっぷり残っていてブナの原生林の雰囲気もよく大変気に入りました。情報参考にさせていただきました。ありがとうございました。
ウエブマスター (日曜日, 22 4月 2018 19:07)
家の前の桜はまだですが、盛岡はすでに満開。テレマークはこれからが良い季節ですよ!
白州丸 (日曜日, 15 4月 2018 15:59)
今シーズンのテレマークもそろそろ終わり?桜も咲き始めましたあ?
ウエブマスター (土曜日, 07 5月 2016 12:18)
白州丸さま
宮古では恒例のuno大会も盛り上がりました!
旧道歩きは発見があって楽しいですね!
白州丸 (木曜日, 05 5月 2016 16:03)
1泊2日の宮古の充実した旅でしたね。女性3名を従え賑やかで大きな天候の崩れも無く良かったです。
白州丸 (日曜日, 06 3月 2016 10:50)
親子の協力、ほのぼのとして少ない成果でも美味しさがギュット詰まっている事でしょう。
ウエブマスター (日曜日, 10 1月 2016 11:41)
白州丸さま
ジムニーで薪運搬!
こういうのって、田舎暮らしならではの楽しさですね!
白州丸 (土曜日, 09 1月 2016 14:13)
有り難いプレゼント、ジムニー大活躍ですね!!
白州丸 (土曜日, 26 9月 2015 17:10)
手を加えた分だけ建物は答えてくれます、又達成感は喜びになるでしょう。
白州丸 (土曜日, 26 9月 2015)
父と娘の縦走、紅葉が綺麗ですね、山ガールも頑張りましたね!!
白州丸 (土曜日, 15 8月 2015 15:52)
見事に蘇りました、15年の歴史がしみ込んだテーブル作業中はいろんな思いも浮かんだ事でしょう。我が家は削って(多分電動鉋?)もらいましたが手作業はご苦労様でした。又新しい家族の歴史(汚れ?)が刻まれる事でしょう。帰ってきた家族もさぞびっくり!!
白州丸 (火曜日, 30 6月 2015 10:19)
テーブル完成おめでとうございます。ここ迄秋田杉を利用できれば樹も喜んでいる事でしょう。無垢板は存在感ありますね!!このテーブルからどんな作品が出来るか楽しみですね
ウエブマスター (日曜日, 17 5月 2015 12:24)
リタイヤじっちゃん様
丸森制覇、おめでとうございます!私はタイミングを逃し、今年は行けず残念でしたが、動画を拝見させていただき、行った気になれました!それにしてもクマにはビックリ!!
リタイヤじっちゃん (火曜日, 12 5月 2015 09:27)
ウエブマスターの丸森ツアー(2013.5.12)でアクセスルートを知ったのは昨年の夏ごろ、それから5月の連休が待ち遠しく長いものでした。途中熊さんの歓迎を受けましたが、楽しく登ることができました。情報ありがとうございました。来冬は須賀倉を頂戴します。(山行記録YouTube”丸森”)
ウエブマスター (水曜日, 29 4月 2015 07:49)
史実探偵さま、コメント有難うございます。なるほど!奥が深そうですねー。
史実探偵:平素人 (日曜日, 26 4月 2015 00:02)
はじめまして^^、ウエブ釜石鉱山で検索訪問しました。ホームのお写真を見て、これが私の広報する、『BC.2001年に地球を半周し東北へ降臨した巨大隕石の核!』 かと思うと胸のたかまりを覚えます。よろしかったら、myブログのカテゴリー;巨大隕石(5) &, 巨大津波(4)へ、どうぞ^^!
小岩 (日曜日, 05 10月 2014 14:24)
シロハヤブサの続編に期待・・豊かな発想に拍手を送ります。
小岩じいじ (日曜日, 05 10月 2014 14:16)
岩手の旅行記は風景写真の見事さと臨場感あふれる文章にいつも感心しています。次号を楽しみにしています。
小岩 (日曜日, 05 10月 2014 14:06)
泉ちゃん堂々の3位入賞おめでとう。又1つ話題ができましたね。来年は優勝目指して下さい。
リタイヤじっちゃん (日曜日, 05 10月 2014 10:09)
体力的に門馬コースは無理ですが、教えていただいた丸森には挑戦させて頂きます。尚、剣ヶ峰山行記録はyouTubeで公開してますがどなたとも知らず貴方の車ときのこ採りの3人には無料出演して頂いでおりますのであしからず。但し誰も見ませんが。(笑)
ウェブマスター (日曜日, 05 10月 2014 00:06)
いやはや!
ニアミスしていたわけですね、リタイヤじっちゃん様!やはり早池峰剣ヶ峰、いい山ですよねー!
今度は、門馬コースにも久々にチャレンジしたいと思っています!
リタイヤじっちゃん (水曜日, 01 10月 2014 18:16)
久しぶりに覗いて見てびっくりしました。9月15日早池峰剣ヶ峰で好青年と交差したことを覚えております。あの時の白髪親父がじっちゃんです。初めて登りましたがいい山でした。
ウェブマスター (土曜日, 07 6月 2014 22:03)
ritzさん、コメント有難うございます!
阿部館山良かったですよ!来年も絶対行きます!その時お会いするかもしれませんね!今後ともこの隠れ家的HPをよろしくお願い致します!
ritz (火曜日, 03 6月 2014 00:16)
はじめまして。
4/13阿部館山の記事拝見しました。素晴らしいところですね。
4月頭に櫃取湿原や青松葉山界隈を歩き(滑り)、斜面や森の雰囲気に感動しました。北上高地は初めて訪れましたが、また行ってみたいと思っています。
これからも岩手の山滑りの記録、楽しみにしています。