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四枚平山(2018.3.21)

四枚平山(824m)は北上市和賀町を流れる北本内川の上流に位置し、奥羽山脈が沢内盆地で二分する東側山塊の真っ只中にある。
2万5千分の1地形図「陸中猿橋」には七内川に沿って登山道が記されており、沢内村(現西和賀町)の山という印象を持つ。
標高が低いうえに、最奥に位置するため、麓から山の姿を望むことが殆どできない。
山容にも登高意欲を掻き立てるほどの魅力が感じられず、藪山になっているようだ。

特徴的なことと言えば、山の呼び名だろうか。
「シマイピラ」と呼ぶ。
ピラはマタギ用語で山の斜面を言うので、それが4枚あると言うことで、地形図で俯瞰すると分からなくもない。
沢内とマタギの繋がりも違和感がない。
もう一つ個人的に特徴的に感じるのは、登山拠点となる長瀬野地区が、1970年に経済企画庁の集落再編成モデル事業で誕生した新しい集落だということ。
これは豪雪に悩む地区民の生活改善のため、長瀬野、七内、和佐内の各地区に散在する家屋を幹線道路筋へ移転集約したもので、20年以上前に沢内村担当として巡回していた頃に新鮮な印象を受けたのを覚えている。

県道1号線で山伏トンネルを越え、沢内に入る。
車窓の右手には高下岳の山容が雄大だ。
左手はなだらかな山並みが延々と続き、特徴的なものを見出せない。
泉沢で県道と別れ長瀬野に入る。
駅前広場のような印象の中心街を抜け両沢公民館の手前で、左手に高下岳とその背後に和賀岳が望まれた。
七内川に沿って山に分け入る町道が、和佐内からの道と合流するところで除雪は終了した。
この先にも民家らしきものは見えるけど、集落再編で転出した家ばかりなのだろう。

両沢公民館近くから和賀岳と高下岳を望む。
(両沢公民館近くから和賀岳と高下岳を望む。)

ここからの道路歩きはかなり長い。
山に取り付く高鼻沢出合まで4.4㎞もある。
積雪期の四枚平山登山は車道歩きがあまりにも長いので、一般にはお薦めしない。
今日はblack diamond polar star のステップソールと皮革ブーツのコンビ。
気温が低く堅い雪原はスキーが良く走るので長距離には有難い。
人気のない民家が点在する景色というのは、集団移転だと分かっていてもあまり晴ればれした気がしない。誰かの足跡さえない雪原を進むのは、妙な孤独感がある。
右手の斜面には至る所に雪崩跡があり、曇天という天候も孤独感を増幅させるのだろうか。
農地を抜けてスギ林に入ると、一杯に散らばったスギの落ち葉でスキーが滑らなくなる。雪面もガリガリの凸凹で、それまでの快適な雪原歩きから一変する。

除雪終点。ここから長い歩きが始まる。
(除雪終点。ここから長い歩きが始まる。)
今日の相棒
(今日の相棒)
人気のない山村を進む。電線が低い。
(人気のない山村を進む。電線が低い!)
七内川に沿って進む。
(七内川に沿って進む。)
スギの落ち葉で板が滑らない。雪もガリガリの凸凹
(スギの落ち葉で板が滑らない。雪もガリガリの凸凹)

七内川堰堤は車道歩きの中間地点だ。
この先は林道の様相で七内川も近くなる。
北ノ又沢出合では右手に分岐する道を見落とさないよう注意する。
右手の高鼻沢沿いに林道を進み、前方にアカマツが数本生える尾根が見えたら、そこが山への取り付き口だ。ここまで1時間30分以上費やした。

山に取り付く尾根は、いきなり急登だ。
ステップソールでは無理なのでシールを装着してカニ歩きで登る。
急な尾根は両側が深く切れ落ち、雪面もガリガリなので緊張する。
グングン高度を稼ぐけど、展望はなかなかひらけない。
途中で唯一、高鼻沢上流の814m峰が望めたぐらいだ。

高鼻沢に入る。前方に取りつく尾根が見える。
(高鼻沢に入る。前方に取りつく尾根が見える。)
尾根の取りつき付近にあったナラとケヤキの巨木
(尾根の取りつき付近にあったナラとケヤキの巨木)
高鼻沢源頭部の814m峰
(高鼻沢源頭部の814m峰)

次第に傾斜が緩くなり、標高680mまで登ると、二重山稜のような斜面になる。
雪質さえ良ければ滑りを楽しめそうな感じだ。
標高789mのピークは良い展望台だ。
ここまで来て初めて、前方の稜線越しに四枚平山の山頂をかろうじて望むことができる。
ここから見る限り、四枚平山に4枚のヒラと言う語源は当てはまらない気がする。
北本内川上流の山々も一望でき、最奥に鎮座する小倉山が印象的だ。

急な尾根筋で、幹の7割以上がなくなっても懸命に生きるブナを見つけた。
(急な尾根筋で、幹の7割以上がなくなっても懸命に生きるブナを見つけた。)
789mピークから小倉山など北本内川源流の山々を望む。
(789mピークから小倉山など北本内川源流の山々を望む。)
手前の稜線越しに四枚平山山頂が見える。
(手前の稜線越しに四枚平山山頂が見える。)

次の鞍部まで下ると、以外にも秋田駒ヶ岳が見えた。
この先は大した登りもないのでシールを外す。
稜線の左肩は巨大な雪庇が発達し、一部では雪崩を起こしている。
マタギがピラと呼んで猟場に使うには危険過ぎる感じだ。
頂上手前の小ピークからは岩手山も見えた。
ここからはブナ林が続き、まもなく縦長に広い平坦地となり、その一番奥に四枚平山山頂があるはずだ。
しかし、GPSで確認した山頂に山名板などは見当たらなかった。
仕方ないので、スキー板を立てて記念写真を撮ったものの、山頂らしさがなく味気ない。
平らな山頂はブナ林に囲まれ眺望は効かないが、暗い感じはせず雰囲気は良い。
ここまで来て思うに四枚平山は、どん詰まり(おしまい)の平らな山というのが率直な感想だ。
静けさの中、一人昼食をとる。
途中、古ぼけた標識テープを2回見た以外は、木に付けられた鉈目もなく、全く人臭さのない山だ。

発達した雪庇にはクラックが入り危険な状態。
(発達した雪庇にはクラックが入り危険な状態。)
縦長な平坦地が続く四枚平山
(縦長な平坦地が続く四枚平山)
四枚平山山頂にて
(四枚平山山頂にて)
静かな山頂で、昼食をとる。
(静かな山頂で、昼食をとる。)

下山を開始して直ぐ、山頂のやや西で、スポット的に南方の眺めが良い場所がある。
名もなく、しかし深い山々が、緩やかな稜線で繋がっている。
その遥か後方には経塚山や牛形山など夏油の山々が望まれる。

 

その直後、木の根元の穴に、針金の付いた板が落ちているのを発見した。割れてしまった山名板だ。なんという幸運だろう。早速拾い上げて応急処置し記念写真を撮る。

山頂付近、南方の眺めがいい。
(山頂付近、南方の眺めがいい。)
遠く夏油の山々も見える。
(遠く夏油の山々も見える。)
そして、まさかの山名板発見。
(そして、まさかの山名板発見!)

下山は相変わらず雪が堅いものの、それでも登りのときに比べれば幾らかエッジも効くようになり、山の標高が低いことに助けられた。
稜線部は傾斜も丁度良く、それなりにターンができ、二重山稜が終わる標高680m辺りまではスキーを楽しめた。
それより先は、急傾斜と痩せ尾根で、転倒や滑落しないことに神経を注ぐ。
一番最後の急傾斜区間は、スキーを外し、担いで下山した。
雪はガチガチなので、ツボ足が潜ることはなく、グリセードにもならない。

雪庇の崩落に注意しながら稜線を進む。
(雪庇の崩落に注意しながら稜線を進む。)
急な痩せ尾根は緊張の下山だ。
(急な痩せ尾根は緊張の下山だ。)
堅い斜面は、滑落したら一巻の終わりだ。
(堅い斜面は、滑落したら一巻の終わりだ。)

スノーブリッジを越えて林道に到達し一息つく。
滑落の危険からは解放されたが、この先の林道歩きも七内川に転落しかねない危険箇所があるので、まだ気は抜けない。
農地まで辿り着けば、あとは正面に真昼岳と女神山を見据えながら雪原にスキーを走らせるだけだ。
四枚平山は派手さはないけれど、スリリングな登高やシール歩行、ハイクアップ、スノーブリッジの渡渉など、様々な要素を含んだ印象深いツアーとなった。
今日は家に帰ってから銀河高原ビールで乾杯だ。

前方に真昼岳を望みながら農地を帰路に着く。
(前方に真昼岳を望みながら農地を帰路に着く。)
コメント: 37
  • #37

    ウエブマスター (木曜日, 22 7月 2021 15:34)

    昔の列車旅は、移動中も面白味がありました。駅にも「名所案内」の看板があり、駅名表示の下にも「●●郡●●村」とか書いてあるのが好きでした。

  • #36

    白州丸 (土曜日, 17 7月 2021 15:24)

    宮城〜岩手〜秋田〜青森と東北縦横断の旅堪能しました。沿線の温泉に入りたい!
    画像加工いいですね!!

  • #35

    ウエブマスター (金曜日, 16 7月 2021 23:49)

    私が描いたと言いたいところですが、撮った写真を加工したんですよー
    でも、文字は女流書家 泉に依頼したものです!

  • #34

    白州丸 (水曜日, 14 7月 2021 16:46)

    産業と共に生きた雫駅の歴史が分かります。駅舎のスケッチも良いですが因みに誰のタッチ?

  • #33

    ウエブマスター (土曜日, 13 3月 2021 11:08)

    徳永さん、了解しました!
    ウエブマスターまでメールいただければ地図を返信いたします!

  • #32

    徳永光保 (金曜日, 12 3月 2021 07:33)

    前山の記事 拝見しました。
    西和賀方面にこの時期にいけるところを探していたので興味があります。だいたい見当はつくのですが
    もしよろしかったらルートの地図をいただけないでしょうか。よろしくお願いします。

  • #31

    ウエブマスター (日曜日, 28 2月 2021 17:38)

    chanmikiさん
    いらっしゃいませ!
    コメントありがとうございます。
    日付は更新日でモナドノックは20日にツアーしました。
    慣れていないと迷うと思うので、メールいただければ私の地図を送りますよ!

  • #30

    ウエブマスター (日曜日, 28 2月 2021 17:28)

    白州丸さん
    長いことコメントに気付かずスミマセン
    東京は大変ですよね。
    ワカサギを食べさせてあげれないのが残念です。
    大願成就の次の回、長女と岩洞湖に行きましたが、またしても大漁でした!
    岩手は恵まれてますよ!

  • #29

    chanmiki (火曜日, 23 2月 2021 21:07)

    初めてコメントします。同じ小学校区、同じピアノ教室だったTです。
    数年前からこのブログを見つけて、感動!尊敬!たくさん学ばせて頂いています。
    本日23日も、「岩神山から田代牧場へ」を真似っこしようと行ったのですが、雪が少なそうで止め、区界駅2番ホームからの牧野へ行こうかとホームまで行きました。迷って結局、桐の木沢山へ行ったのですが、「モナドノック」を見てびっくり!
    でも本日23日じゃないですよね?天気から。
    私も単身赴任で106号を使っていたので、北上高地の、しかも地形のプロの記事、とても興味深く読んでいます。もちろん地元雫石のもです!

  • #28

    白州丸 (土曜日, 09 1月 2021 21:04)

    コロナ禍で気づく事も多く、人と接せず作業をする一次産業やステイホームで地元を考える機会も多苦なりそれが新しい日常と気づくかもしれません。地元愛と働く人に感謝¡¡

  • #27

    白州丸 (月曜日, 28 12月 2020 11:11)

    コロナ禍で始まったこの1年、地表ををすっかり覆ってしまう新雪はしばし巷のゴタゴタも忘れさせてくれます。

  • #26

    白州丸 (木曜日, 10 10月 2019 16:45)

    馬愛の結晶でしょうね!優しい表情が印象的です。

  • #25

    ウエブマスター (火曜日, 30 4月 2019 11:10)

    徳永様
    お久しぶりです!
    コメント有難うございます!
    丸森良かったですねー
    雪もたっぷりで何よりでした。
    そろそろクマさんがウロウロしているようです。先日大松倉で足跡を見ました。お互いに気を付けましょう!
    いつか、ウロコでご一緒したいです!

  • #24

    徳永光保 (日曜日, 21 4月 2019 20:05)

    以前 森林鉄道のツアーでお世話になりました徳永です。本日こちらで紹介されている丸森にうろこテレマークで行ってきました。雪もたっぷり残っていてブナの原生林の雰囲気もよく大変気に入りました。情報参考にさせていただきました。ありがとうございました。

  • #23

    ウエブマスター (日曜日, 22 4月 2018 19:07)

    家の前の桜はまだですが、盛岡はすでに満開。テレマークはこれからが良い季節ですよ!

  • #22

    白州丸 (日曜日, 15 4月 2018 15:59)

    今シーズンのテレマークもそろそろ終わり?桜も咲き始めましたあ?

  • #21

    ウエブマスター (土曜日, 07 5月 2016 12:18)

    白州丸さま
    宮古では恒例のuno大会も盛り上がりました!
    旧道歩きは発見があって楽しいですね!

  • #20

    白州丸 (木曜日, 05 5月 2016 16:03)

    1泊2日の宮古の充実した旅でしたね。女性3名を従え賑やかで大きな天候の崩れも無く良かったです。

  • #19

    白州丸 (日曜日, 06 3月 2016 10:50)

    親子の協力、ほのぼのとして少ない成果でも美味しさがギュット詰まっている事でしょう。

  • #18

    ウエブマスター (日曜日, 10 1月 2016 11:41)

    白州丸さま
    ジムニーで薪運搬!
    こういうのって、田舎暮らしならではの楽しさですね!

  • #17

    白州丸 (土曜日, 09 1月 2016 14:13)

    有り難いプレゼント、ジムニー大活躍ですね!!

  • #16

    白州丸 (土曜日, 26 9月 2015 17:10)

    手を加えた分だけ建物は答えてくれます、又達成感は喜びになるでしょう。

  • #15

    白州丸 (土曜日, 26 9月 2015)

    父と娘の縦走、紅葉が綺麗ですね、山ガールも頑張りましたね!!

  • #14

    白州丸 (土曜日, 15 8月 2015 15:52)

    見事に蘇りました、15年の歴史がしみ込んだテーブル作業中はいろんな思いも浮かんだ事でしょう。我が家は削って(多分電動鉋?)もらいましたが手作業はご苦労様でした。又新しい家族の歴史(汚れ?)が刻まれる事でしょう。帰ってきた家族もさぞびっくり!!

  • #13

    白州丸 (火曜日, 30 6月 2015 10:19)

    テーブル完成おめでとうございます。ここ迄秋田杉を利用できれば樹も喜んでいる事でしょう。無垢板は存在感ありますね!!このテーブルからどんな作品が出来るか楽しみですね

  • #12

    ウエブマスター (日曜日, 17 5月 2015 12:24)

    リタイヤじっちゃん様
    丸森制覇、おめでとうございます!私はタイミングを逃し、今年は行けず残念でしたが、動画を拝見させていただき、行った気になれました!それにしてもクマにはビックリ!!

  • #11

    リタイヤじっちゃん (火曜日, 12 5月 2015 09:27)

    ウエブマスターの丸森ツアー(2013.5.12)でアクセスルートを知ったのは昨年の夏ごろ、それから5月の連休が待ち遠しく長いものでした。途中熊さんの歓迎を受けましたが、楽しく登ることができました。情報ありがとうございました。来冬は須賀倉を頂戴します。(山行記録YouTube”丸森”)

  • #10

    ウエブマスター (水曜日, 29 4月 2015 07:49)

    史実探偵さま、コメント有難うございます。なるほど!奥が深そうですねー。

  • #9

    史実探偵:平素人 (日曜日, 26 4月 2015 00:02)

    はじめまして^^、ウエブ釜石鉱山で検索訪問しました。ホームのお写真を見て、これが私の広報する、『BC.2001年に地球を半周し東北へ降臨した巨大隕石の核!』 かと思うと胸のたかまりを覚えます。よろしかったら、myブログのカテゴリー;巨大隕石(5) &, 巨大津波(4)へ、どうぞ^^!

  • #8

    小岩 (日曜日, 05 10月 2014 14:24)

    シロハヤブサの続編に期待・・豊かな発想に拍手を送ります。

  • #7

    小岩じいじ (日曜日, 05 10月 2014 14:16)

    岩手の旅行記は風景写真の見事さと臨場感あふれる文章にいつも感心しています。次号を楽しみにしています。

  • #6

    小岩 (日曜日, 05 10月 2014 14:06)

    泉ちゃん堂々の3位入賞おめでとう。又1つ話題ができましたね。来年は優勝目指して下さい。

  • #5

    リタイヤじっちゃん (日曜日, 05 10月 2014 10:09)

    体力的に門馬コースは無理ですが、教えていただいた丸森には挑戦させて頂きます。尚、剣ヶ峰山行記録はyouTubeで公開してますがどなたとも知らず貴方の車ときのこ採りの3人には無料出演して頂いでおりますのであしからず。但し誰も見ませんが。(笑)

  • #4

    ウェブマスター (日曜日, 05 10月 2014 00:06)

    いやはや!
    ニアミスしていたわけですね、リタイヤじっちゃん様!やはり早池峰剣ヶ峰、いい山ですよねー!
    今度は、門馬コースにも久々にチャレンジしたいと思っています!

  • #3

    リタイヤじっちゃん  (水曜日, 01 10月 2014 18:16)

    久しぶりに覗いて見てびっくりしました。9月15日早池峰剣ヶ峰で好青年と交差したことを覚えております。あの時の白髪親父がじっちゃんです。初めて登りましたがいい山でした。

  • #2

    ウェブマスター (土曜日, 07 6月 2014 22:03)

    ritzさん、コメント有難うございます!
    阿部館山良かったですよ!来年も絶対行きます!その時お会いするかもしれませんね!今後ともこの隠れ家的HPをよろしくお願い致します!

  • #1

    ritz (火曜日, 03 6月 2014 00:16)

    はじめまして。
    4/13阿部館山の記事拝見しました。素晴らしいところですね。
    4月頭に櫃取湿原や青松葉山界隈を歩き(滑り)、斜面や森の雰囲気に感動しました。北上高地は初めて訪れましたが、また行ってみたいと思っています。
    これからも岩手の山滑りの記録、楽しみにしています。