僕のバックカントリーシーズンは、毎年、地元雫石の須賀倉山(940m)からスタートする。
この冬はここ数年の雪不足からようやく平年並みに戻った感じで、大村の集落も久しぶりに深い雪に包まれていた。
登山口よりだいぶ手前で除雪が終わり、そこで身支度を整える。
通いなれた山だけど、今回は板もブーツもツアー初使用なので新鮮だ。
とはいってもどちらも友人から中古を譲り受けたもの。
しかし、板に関しては僕にとって初めてのノーマルソール板なので、特に下山が楽しみだ。
最初からシールをつけなければならないが、そのシールはかみさん用に10年以上前に買って一度も使っていなかったもので、ようやく日の目を見れて嬉しい。
ここから登山口までは、スノーモビルの轍を歩く。
薄っすら積もった新雪を踏みしめて、一歩一歩板を進める。
時折小鳥の声を聴きながら、歩きながらも調子を整える。
優しげな沢の音が聞こえてきた。橋から沢をのぞきこむ。
氷で縁取られたその姿は厳冬期そのものだけど、沢の音にはやがてやってくる春を感じてしまうのはなぜだろうか。
スノーモビルの轍は、登山口のすぐ上の採草地で終わっていた。
ここから先は新雪のラッセルだ。
先週は雪の日が続き、気温も低かったので、今日の雪のコンディションは最高なはずだ。
ただ、今日は気温が幾分高め(-3℃ぐらい)で、すぐに一枚脱ぐ。できれば帽子も脱ぎたいぐらいだ。
登山道のない須賀倉山も少しずつ知名度が上がっている様子で、ここ2年ぐらいは誰かしら先客のトレースが残っていたけれど、今年はまだ誰もここを歩いていないみたいだ。
振り返ると、自分のトレースだけがきれいに伸びている。
畑台放牧地までくると、風が出てくる。
今日は曇り空で、奥羽山脈の大パノラマは望めない。
ここから先は、勾配が増す。眼下の開けた景色に励まされながらの登りだ。
左に目をやると女助山が同じぐらいの高さに望まれる。
放牧地のトップから稜線に出るまでは、さらに勾配が増す。
樹林帯も相変わらずの新雪で、下山を楽しみにする。
稜線に到達すると、まもなくブナ平だ。
いつになく積雪が多く、見栄えする。
去年は藪だらけで美しくなかった。
一旦下ったあと、再びブナ林の登りが待っている。
熊棚があちこちにある。
急登が終わり稜線に出てからも緩やかな登りは続く。
時々、バキッと足元で氷が割れる音がする。
もちろん足元は新雪があるだけなので、その下で古い雪が割れているのだろう。
ズズッと雪が沈むような音がする時もある。
見た目に雪面に変化はなく、ほとんど傾斜のない樹林帯だけに雪崩の心配はないのだが、最初は気味が悪かった。しかし、それにも次第に慣れてきた。
山頂間近の稜線はブナの幹が雪化粧し、幻想的な光景が広がっていた。
9時8分に登山開始し、既に時間は12時30分。腹は減っているけれど、見とれてしまう。
須賀倉山山頂には12時45分に到達した。
この山頂は不思議なことに、絶対に雪が積もらない部分がある。地面から噴気でも出ているのかと手をかざしても、特に異常はないのだが。今年は雪も多く、最近も降ったばかりだというのに、今回もやはり積もっていない部分があった。
手早くツェルトを張って昼食にする。
薄い1枚の生地があるだけで、中は自分の体温ですごく温かく感じる。フリースを着なくても大丈夫だ。
暖かなツェルトの中でおにぎりを頬張る。「うめー!」と思わず声にする。
ゆっくり味わって食べれるのがツェルトのメリットだ。
そして、湯を沸かしてカップラーメンを食べる。雪山で食べる熱々のカップラーメンは、まさに胃袋に浸みわたる。
どんな有名店のラーメンよりも旨いと感じる
思わず「幸せだなー」と独り言。
さらにコーヒーで口直し。
ベンチレーターの穴から見える外は雪がちらついている。そんな景色を眺めながら飲むコーヒーは、インスタントとは思えない美味しさだ。
口直しが済んだら、撤収して下山にかかる。山頂の出発は13時50分。1時間以上も山頂でゆっくり過ごしたことになる。
そして下山は、まさに期待を裏切らない結果となった。
今までに須賀倉山で味わったことがない、素晴らしい雪の質と量。
さらに、初めての板は、これまでのより幅が広く、長さが短いので、樹林帯での取り回しがしやすいときた。
上から下まで最高の雪質は続き、雄叫びの連続。
一部、樹林が濃すぎてしかも急斜面の区間があり、いつもは必ず板を外すのだけど、今回は初めて板を外さずに済んだほどだ。
あまりの気持ち良さに、最後の斜面では登り返しておかわりを楽しんだ。
樹林帯あり、風衝地ありでなかなかテクニカルな須賀倉山。
この時期のバックカントリーツアーで、一度も転倒することなく終えるなんて初めての経験だ。
下山後は鶯宿温泉の小枝旅館で温泉に浸かる。料金300円と格安で、しかも源泉かけ流し。
湯温も丁度よく、湯船に浸かった瞬間、「あー、極楽!」と思わず声に出る。
貸切状態だったので、他人に気兼ねする必要もない。
それにしても、「地上に極楽があるとすれば、まさにこの状態を言うに違いない」と心から感じる。
シーズン最初のバックカントリーツアーは、雫石町内完結の満足度の高いツアーとなった。
ウエブマスター (木曜日, 22 7月 2021 15:34)
昔の列車旅は、移動中も面白味がありました。駅にも「名所案内」の看板があり、駅名表示の下にも「●●郡●●村」とか書いてあるのが好きでした。
白州丸 (土曜日, 17 7月 2021 15:24)
宮城〜岩手〜秋田〜青森と東北縦横断の旅堪能しました。沿線の温泉に入りたい!
画像加工いいですね!!
ウエブマスター (金曜日, 16 7月 2021 23:49)
私が描いたと言いたいところですが、撮った写真を加工したんですよー
でも、文字は女流書家 泉に依頼したものです!
白州丸 (水曜日, 14 7月 2021 16:46)
産業と共に生きた雫駅の歴史が分かります。駅舎のスケッチも良いですが因みに誰のタッチ?
ウエブマスター (土曜日, 13 3月 2021 11:08)
徳永さん、了解しました!
ウエブマスターまでメールいただければ地図を返信いたします!
徳永光保 (金曜日, 12 3月 2021 07:33)
前山の記事 拝見しました。
西和賀方面にこの時期にいけるところを探していたので興味があります。だいたい見当はつくのですが
もしよろしかったらルートの地図をいただけないでしょうか。よろしくお願いします。
ウエブマスター (日曜日, 28 2月 2021 17:38)
chanmikiさん
いらっしゃいませ!
コメントありがとうございます。
日付は更新日でモナドノックは20日にツアーしました。
慣れていないと迷うと思うので、メールいただければ私の地図を送りますよ!
ウエブマスター (日曜日, 28 2月 2021 17:28)
白州丸さん
長いことコメントに気付かずスミマセン
東京は大変ですよね。
ワカサギを食べさせてあげれないのが残念です。
大願成就の次の回、長女と岩洞湖に行きましたが、またしても大漁でした!
岩手は恵まれてますよ!
chanmiki (火曜日, 23 2月 2021 21:07)
初めてコメントします。同じ小学校区、同じピアノ教室だったTです。
数年前からこのブログを見つけて、感動!尊敬!たくさん学ばせて頂いています。
本日23日も、「岩神山から田代牧場へ」を真似っこしようと行ったのですが、雪が少なそうで止め、区界駅2番ホームからの牧野へ行こうかとホームまで行きました。迷って結局、桐の木沢山へ行ったのですが、「モナドノック」を見てびっくり!
でも本日23日じゃないですよね?天気から。
私も単身赴任で106号を使っていたので、北上高地の、しかも地形のプロの記事、とても興味深く読んでいます。もちろん地元雫石のもです!
白州丸 (土曜日, 09 1月 2021 21:04)
コロナ禍で気づく事も多く、人と接せず作業をする一次産業やステイホームで地元を考える機会も多苦なりそれが新しい日常と気づくかもしれません。地元愛と働く人に感謝¡¡
白州丸 (月曜日, 28 12月 2020 11:11)
コロナ禍で始まったこの1年、地表ををすっかり覆ってしまう新雪はしばし巷のゴタゴタも忘れさせてくれます。
白州丸 (木曜日, 10 10月 2019 16:45)
馬愛の結晶でしょうね!優しい表情が印象的です。
ウエブマスター (火曜日, 30 4月 2019 11:10)
徳永様
お久しぶりです!
コメント有難うございます!
丸森良かったですねー
雪もたっぷりで何よりでした。
そろそろクマさんがウロウロしているようです。先日大松倉で足跡を見ました。お互いに気を付けましょう!
いつか、ウロコでご一緒したいです!
徳永光保 (日曜日, 21 4月 2019 20:05)
以前 森林鉄道のツアーでお世話になりました徳永です。本日こちらで紹介されている丸森にうろこテレマークで行ってきました。雪もたっぷり残っていてブナの原生林の雰囲気もよく大変気に入りました。情報参考にさせていただきました。ありがとうございました。
ウエブマスター (日曜日, 22 4月 2018 19:07)
家の前の桜はまだですが、盛岡はすでに満開。テレマークはこれからが良い季節ですよ!
白州丸 (日曜日, 15 4月 2018 15:59)
今シーズンのテレマークもそろそろ終わり?桜も咲き始めましたあ?
ウエブマスター (土曜日, 07 5月 2016 12:18)
白州丸さま
宮古では恒例のuno大会も盛り上がりました!
旧道歩きは発見があって楽しいですね!
白州丸 (木曜日, 05 5月 2016 16:03)
1泊2日の宮古の充実した旅でしたね。女性3名を従え賑やかで大きな天候の崩れも無く良かったです。
白州丸 (日曜日, 06 3月 2016 10:50)
親子の協力、ほのぼのとして少ない成果でも美味しさがギュット詰まっている事でしょう。
ウエブマスター (日曜日, 10 1月 2016 11:41)
白州丸さま
ジムニーで薪運搬!
こういうのって、田舎暮らしならではの楽しさですね!
白州丸 (土曜日, 09 1月 2016 14:13)
有り難いプレゼント、ジムニー大活躍ですね!!
白州丸 (土曜日, 26 9月 2015 17:10)
手を加えた分だけ建物は答えてくれます、又達成感は喜びになるでしょう。
白州丸 (土曜日, 26 9月 2015)
父と娘の縦走、紅葉が綺麗ですね、山ガールも頑張りましたね!!
白州丸 (土曜日, 15 8月 2015 15:52)
見事に蘇りました、15年の歴史がしみ込んだテーブル作業中はいろんな思いも浮かんだ事でしょう。我が家は削って(多分電動鉋?)もらいましたが手作業はご苦労様でした。又新しい家族の歴史(汚れ?)が刻まれる事でしょう。帰ってきた家族もさぞびっくり!!
白州丸 (火曜日, 30 6月 2015 10:19)
テーブル完成おめでとうございます。ここ迄秋田杉を利用できれば樹も喜んでいる事でしょう。無垢板は存在感ありますね!!このテーブルからどんな作品が出来るか楽しみですね
ウエブマスター (日曜日, 17 5月 2015 12:24)
リタイヤじっちゃん様
丸森制覇、おめでとうございます!私はタイミングを逃し、今年は行けず残念でしたが、動画を拝見させていただき、行った気になれました!それにしてもクマにはビックリ!!
リタイヤじっちゃん (火曜日, 12 5月 2015 09:27)
ウエブマスターの丸森ツアー(2013.5.12)でアクセスルートを知ったのは昨年の夏ごろ、それから5月の連休が待ち遠しく長いものでした。途中熊さんの歓迎を受けましたが、楽しく登ることができました。情報ありがとうございました。来冬は須賀倉を頂戴します。(山行記録YouTube”丸森”)
ウエブマスター (水曜日, 29 4月 2015 07:49)
史実探偵さま、コメント有難うございます。なるほど!奥が深そうですねー。
史実探偵:平素人 (日曜日, 26 4月 2015 00:02)
はじめまして^^、ウエブ釜石鉱山で検索訪問しました。ホームのお写真を見て、これが私の広報する、『BC.2001年に地球を半周し東北へ降臨した巨大隕石の核!』 かと思うと胸のたかまりを覚えます。よろしかったら、myブログのカテゴリー;巨大隕石(5) &, 巨大津波(4)へ、どうぞ^^!
小岩 (日曜日, 05 10月 2014 14:24)
シロハヤブサの続編に期待・・豊かな発想に拍手を送ります。
小岩じいじ (日曜日, 05 10月 2014 14:16)
岩手の旅行記は風景写真の見事さと臨場感あふれる文章にいつも感心しています。次号を楽しみにしています。
小岩 (日曜日, 05 10月 2014 14:06)
泉ちゃん堂々の3位入賞おめでとう。又1つ話題ができましたね。来年は優勝目指して下さい。
リタイヤじっちゃん (日曜日, 05 10月 2014 10:09)
体力的に門馬コースは無理ですが、教えていただいた丸森には挑戦させて頂きます。尚、剣ヶ峰山行記録はyouTubeで公開してますがどなたとも知らず貴方の車ときのこ採りの3人には無料出演して頂いでおりますのであしからず。但し誰も見ませんが。(笑)
ウェブマスター (日曜日, 05 10月 2014 00:06)
いやはや!
ニアミスしていたわけですね、リタイヤじっちゃん様!やはり早池峰剣ヶ峰、いい山ですよねー!
今度は、門馬コースにも久々にチャレンジしたいと思っています!
リタイヤじっちゃん (水曜日, 01 10月 2014 18:16)
久しぶりに覗いて見てびっくりしました。9月15日早池峰剣ヶ峰で好青年と交差したことを覚えております。あの時の白髪親父がじっちゃんです。初めて登りましたがいい山でした。
ウェブマスター (土曜日, 07 6月 2014 22:03)
ritzさん、コメント有難うございます!
阿部館山良かったですよ!来年も絶対行きます!その時お会いするかもしれませんね!今後ともこの隠れ家的HPをよろしくお願い致します!
ritz (火曜日, 03 6月 2014 00:16)
はじめまして。
4/13阿部館山の記事拝見しました。素晴らしいところですね。
4月頭に櫃取湿原や青松葉山界隈を歩き(滑り)、斜面や森の雰囲気に感動しました。北上高地は初めて訪れましたが、また行ってみたいと思っています。
これからも岩手の山滑りの記録、楽しみにしています。