三ツ石山(1,466m)は、網張温泉スキー場からアクセスできる手軽さ、古いながらもツアー標識があり、途中に避難小屋もあって、何より山頂の東に広がる無立木の大ピステがバックカントリースキーヤーを魅了する、国内有数のメジャールートだ。
もちろん僕にとっても、限られたシーズンの中で欠かせない山だ。
3月中旬ともなれば、ザラメのお気楽ツアーを期待したいところだけど、幸か不幸か直前に新雪が積もり、今日は気温も低い予報だ。
この時期の新雪は水分を含んで重く、板が刺さりやすくなる。また、気温が低いとクラストする可能性があり、細板テレマーカーにとっては難儀するばかりだ。
朝方のスキー場は雪質も上々で、2本足慣らししてから、リフトを3本乗り継いでツアーを開始する。
三ツ石山のツアーはもう20回目ぐらいだけど、今日は初めてのルートを開拓しようと思う。
いつもは下山途中で寄り道して滑る大松倉山の北ピステを、今日は行きがけに滑り降り、そのまま裾野をトラバースして三ツ石小屋に向かう計画だ。慣れた山でも、新ルートの開拓はワクワクする。
問題は大松倉山北ピステの雪の状態だ。
上から目視で確認する限り、シュカブラやギャップは見られないが、雪質までは分からない。
そんな斜面に一歩踏み出すときの緊張感はなんとも言えない。
仮にモナカだったら悪雪の練習をする良い機会になるだろうと覚悟を決めて滑降を開始する。
しかし、そんな不安とは裏腹に、新雪は軽く、思いのほか板が滑った。
間違いなく今シーズン最初で最後のパウダーをこの時期に、しかもバリエーションルートで味わえるとは、これだからツアーは面白い。
おかげで転倒することもなく、北ピステを滑り切ることができた。
裾野のトラバースではステップソールが威力を発揮する。
アオモリトドマツの森は半分ぐらい雪を纏い、樹氷の面影を残している。
不意に近くを真っ白な冬毛の野ウサギが走り去った。
小さな沢を巻いたりして、大分遠回りしながら、ようやく三ッ石山小屋が見えてきた。
三ツ石山に人影やシュプールは見えないので、小屋は大松倉山で僕を追い越した10人ぐらいの登山者で賑わっているはずだ。
しかし、意外なことに、小屋の外にはスキーが2組あるだけだった。
天気も良いので、小屋の外で三ツ石山を眺めながら昼食をとる。
しばらくすると山スキーの人が大松倉山方面から来て、「小屋は混んでますか?」と言う。
やはりこの人もスキーが2組しかないことが腑に落ちないようだ。
三ツ石山にも、奥産道にも、松川温泉方面にもトレースはない。いったい10人の登山者はどこへ行ったのだろう?
これだけ新雪が積もった三ツ石山の大ピステを前にして、大勢いた山スキーヤーの誰一人としてそこを滑っていないのは不気味ですらある。
少なくともここまで来た範囲で、雪崩の危険を感じるような雪質ではなかった。
昼食を済ませると、再びシールを貼り、三ツ石山山頂を目指す。
稜線には雪庇が巨大に発達し、すごい迫力だ。
稜線の手前で雪崩危険度を確認するためのハンドテストをする。
結果は良好で、新雪は積もっているものの弱層は形成されていないことを確認できた。
もし、不安な結果が出ていたら、山頂から稜線をそのまま引き返してくるつもりでいた。
しかし、山頂まであとわずかというところで、ガスが出てきて視界が効かなくなったのは想定外だった。
山頂の岩もハッキリと見えないぐらいのガスで、こういう状況で独立峰から下山する場合、方向を見失い遭難するケースが多いので注意が必要だ。
三ツ石山東斜面の大ピステを滑降する予定でいたけれど、仕方なく稜線を引き返すことにしてシールを外す。
そして、山頂から少し戻ったところでガスは晴れた。なんという幸運だろう。より安全に滑るための目標物も確認でき、これなら問題なく滑降できる。あと心配なのは雪質だけだ。
心配していた雪質もモナカやクラストにはなっておらず、ターンはできた。
斜面上部では、スピードに耐えられずにバランスを崩し、2回ほど転倒した。
斜面下部では斜度も緩くなり、メロウなターンを満喫できた。
やはり山頂にアタックして良かった。
帰りの大松倉山へはシールを貼らずにそのまま登る。
振り返ると、先ほどまでいた三ツ石山が大きな姿を横たえ、麓には人の去った山小屋が静かに佇んでいた。
ウエブマスター (木曜日, 22 7月 2021 15:34)
昔の列車旅は、移動中も面白味がありました。駅にも「名所案内」の看板があり、駅名表示の下にも「●●郡●●村」とか書いてあるのが好きでした。
白州丸 (土曜日, 17 7月 2021 15:24)
宮城〜岩手〜秋田〜青森と東北縦横断の旅堪能しました。沿線の温泉に入りたい!
画像加工いいですね!!
ウエブマスター (金曜日, 16 7月 2021 23:49)
私が描いたと言いたいところですが、撮った写真を加工したんですよー
でも、文字は女流書家 泉に依頼したものです!
白州丸 (水曜日, 14 7月 2021 16:46)
産業と共に生きた雫駅の歴史が分かります。駅舎のスケッチも良いですが因みに誰のタッチ?
ウエブマスター (土曜日, 13 3月 2021 11:08)
徳永さん、了解しました!
ウエブマスターまでメールいただければ地図を返信いたします!
徳永光保 (金曜日, 12 3月 2021 07:33)
前山の記事 拝見しました。
西和賀方面にこの時期にいけるところを探していたので興味があります。だいたい見当はつくのですが
もしよろしかったらルートの地図をいただけないでしょうか。よろしくお願いします。
ウエブマスター (日曜日, 28 2月 2021 17:38)
chanmikiさん
いらっしゃいませ!
コメントありがとうございます。
日付は更新日でモナドノックは20日にツアーしました。
慣れていないと迷うと思うので、メールいただければ私の地図を送りますよ!
ウエブマスター (日曜日, 28 2月 2021 17:28)
白州丸さん
長いことコメントに気付かずスミマセン
東京は大変ですよね。
ワカサギを食べさせてあげれないのが残念です。
大願成就の次の回、長女と岩洞湖に行きましたが、またしても大漁でした!
岩手は恵まれてますよ!
chanmiki (火曜日, 23 2月 2021 21:07)
初めてコメントします。同じ小学校区、同じピアノ教室だったTです。
数年前からこのブログを見つけて、感動!尊敬!たくさん学ばせて頂いています。
本日23日も、「岩神山から田代牧場へ」を真似っこしようと行ったのですが、雪が少なそうで止め、区界駅2番ホームからの牧野へ行こうかとホームまで行きました。迷って結局、桐の木沢山へ行ったのですが、「モナドノック」を見てびっくり!
でも本日23日じゃないですよね?天気から。
私も単身赴任で106号を使っていたので、北上高地の、しかも地形のプロの記事、とても興味深く読んでいます。もちろん地元雫石のもです!
白州丸 (土曜日, 09 1月 2021 21:04)
コロナ禍で気づく事も多く、人と接せず作業をする一次産業やステイホームで地元を考える機会も多苦なりそれが新しい日常と気づくかもしれません。地元愛と働く人に感謝¡¡
白州丸 (月曜日, 28 12月 2020 11:11)
コロナ禍で始まったこの1年、地表ををすっかり覆ってしまう新雪はしばし巷のゴタゴタも忘れさせてくれます。
白州丸 (木曜日, 10 10月 2019 16:45)
馬愛の結晶でしょうね!優しい表情が印象的です。
ウエブマスター (火曜日, 30 4月 2019 11:10)
徳永様
お久しぶりです!
コメント有難うございます!
丸森良かったですねー
雪もたっぷりで何よりでした。
そろそろクマさんがウロウロしているようです。先日大松倉で足跡を見ました。お互いに気を付けましょう!
いつか、ウロコでご一緒したいです!
徳永光保 (日曜日, 21 4月 2019 20:05)
以前 森林鉄道のツアーでお世話になりました徳永です。本日こちらで紹介されている丸森にうろこテレマークで行ってきました。雪もたっぷり残っていてブナの原生林の雰囲気もよく大変気に入りました。情報参考にさせていただきました。ありがとうございました。
ウエブマスター (日曜日, 22 4月 2018 19:07)
家の前の桜はまだですが、盛岡はすでに満開。テレマークはこれからが良い季節ですよ!
白州丸 (日曜日, 15 4月 2018 15:59)
今シーズンのテレマークもそろそろ終わり?桜も咲き始めましたあ?
ウエブマスター (土曜日, 07 5月 2016 12:18)
白州丸さま
宮古では恒例のuno大会も盛り上がりました!
旧道歩きは発見があって楽しいですね!
白州丸 (木曜日, 05 5月 2016 16:03)
1泊2日の宮古の充実した旅でしたね。女性3名を従え賑やかで大きな天候の崩れも無く良かったです。
白州丸 (日曜日, 06 3月 2016 10:50)
親子の協力、ほのぼのとして少ない成果でも美味しさがギュット詰まっている事でしょう。
ウエブマスター (日曜日, 10 1月 2016 11:41)
白州丸さま
ジムニーで薪運搬!
こういうのって、田舎暮らしならではの楽しさですね!
白州丸 (土曜日, 09 1月 2016 14:13)
有り難いプレゼント、ジムニー大活躍ですね!!
白州丸 (土曜日, 26 9月 2015 17:10)
手を加えた分だけ建物は答えてくれます、又達成感は喜びになるでしょう。
白州丸 (土曜日, 26 9月 2015)
父と娘の縦走、紅葉が綺麗ですね、山ガールも頑張りましたね!!
白州丸 (土曜日, 15 8月 2015 15:52)
見事に蘇りました、15年の歴史がしみ込んだテーブル作業中はいろんな思いも浮かんだ事でしょう。我が家は削って(多分電動鉋?)もらいましたが手作業はご苦労様でした。又新しい家族の歴史(汚れ?)が刻まれる事でしょう。帰ってきた家族もさぞびっくり!!
白州丸 (火曜日, 30 6月 2015 10:19)
テーブル完成おめでとうございます。ここ迄秋田杉を利用できれば樹も喜んでいる事でしょう。無垢板は存在感ありますね!!このテーブルからどんな作品が出来るか楽しみですね
ウエブマスター (日曜日, 17 5月 2015 12:24)
リタイヤじっちゃん様
丸森制覇、おめでとうございます!私はタイミングを逃し、今年は行けず残念でしたが、動画を拝見させていただき、行った気になれました!それにしてもクマにはビックリ!!
リタイヤじっちゃん (火曜日, 12 5月 2015 09:27)
ウエブマスターの丸森ツアー(2013.5.12)でアクセスルートを知ったのは昨年の夏ごろ、それから5月の連休が待ち遠しく長いものでした。途中熊さんの歓迎を受けましたが、楽しく登ることができました。情報ありがとうございました。来冬は須賀倉を頂戴します。(山行記録YouTube”丸森”)
ウエブマスター (水曜日, 29 4月 2015 07:49)
史実探偵さま、コメント有難うございます。なるほど!奥が深そうですねー。
史実探偵:平素人 (日曜日, 26 4月 2015 00:02)
はじめまして^^、ウエブ釜石鉱山で検索訪問しました。ホームのお写真を見て、これが私の広報する、『BC.2001年に地球を半周し東北へ降臨した巨大隕石の核!』 かと思うと胸のたかまりを覚えます。よろしかったら、myブログのカテゴリー;巨大隕石(5) &, 巨大津波(4)へ、どうぞ^^!
小岩 (日曜日, 05 10月 2014 14:24)
シロハヤブサの続編に期待・・豊かな発想に拍手を送ります。
小岩じいじ (日曜日, 05 10月 2014 14:16)
岩手の旅行記は風景写真の見事さと臨場感あふれる文章にいつも感心しています。次号を楽しみにしています。
小岩 (日曜日, 05 10月 2014 14:06)
泉ちゃん堂々の3位入賞おめでとう。又1つ話題ができましたね。来年は優勝目指して下さい。
リタイヤじっちゃん (日曜日, 05 10月 2014 10:09)
体力的に門馬コースは無理ですが、教えていただいた丸森には挑戦させて頂きます。尚、剣ヶ峰山行記録はyouTubeで公開してますがどなたとも知らず貴方の車ときのこ採りの3人には無料出演して頂いでおりますのであしからず。但し誰も見ませんが。(笑)
ウェブマスター (日曜日, 05 10月 2014 00:06)
いやはや!
ニアミスしていたわけですね、リタイヤじっちゃん様!やはり早池峰剣ヶ峰、いい山ですよねー!
今度は、門馬コースにも久々にチャレンジしたいと思っています!
リタイヤじっちゃん (水曜日, 01 10月 2014 18:16)
久しぶりに覗いて見てびっくりしました。9月15日早池峰剣ヶ峰で好青年と交差したことを覚えております。あの時の白髪親父がじっちゃんです。初めて登りましたがいい山でした。
ウェブマスター (土曜日, 07 6月 2014 22:03)
ritzさん、コメント有難うございます!
阿部館山良かったですよ!来年も絶対行きます!その時お会いするかもしれませんね!今後ともこの隠れ家的HPをよろしくお願い致します!
ritz (火曜日, 03 6月 2014 00:16)
はじめまして。
4/13阿部館山の記事拝見しました。素晴らしいところですね。
4月頭に櫃取湿原や青松葉山界隈を歩き(滑り)、斜面や森の雰囲気に感動しました。北上高地は初めて訪れましたが、また行ってみたいと思っています。
これからも岩手の山滑りの記録、楽しみにしています。