五番森は岩手県と秋田県の県境をなす奥羽山脈に位置する標高1,048mの山である。
もう少し詳しく言うと奥羽山脈の中でも原生的自然度の高い和賀山塊のさらに核心部に位置していて、さらに付け加えると五番森は我が家の食卓から良く見え、特に積雪期に存在感のある山である。
それはこの山が顕著なピークを持たないかわりに、屏風を広げたような山容で、急な斜面は雪崩の影響により樹林帯が一部欠如し、その部分が冬になると一面真っ白く目立つからだ。
天気の良い日など朝食を食べているときにいつも気になる山、五番森。
この山にぜひ登ってみたいという衝動にいつも駆られていた。
五番森の登山記録は、篤志家が奥羽山脈縦走の過程で通過したものが幾つかある程度で、この山だけを単体で登った記録は皆無と言って良いのではないだろうか。
我が家の窓から入念な調査をし、幾つか浮かんだルート案の中から、これぞと思われるルートで五番森単体でのアタックを試みた。
林道志戸前川線を進み、さらに途中で大地沢に入り、大地高倉を過ぎて直ぐ、左手にJR管理用の橋がある。
ここが今回の登山口だ。
大地沢を橋で渡り、作業道を直ぐに左に折れ、目の前の小沢を徒渉する。
徒渉後は急斜面を3点支持で登り、一息ついた辺りでまた作業道に出くわす。
辺りは立派なスギ人工林でヤブがないのは有難い限りだ。
この先は冷水山をめがけて南方向にひたすら急登するが、地形図にない小沢や作業道が入り組んでいて案外厄介だ。
途中にクレーターのようなかつての炭焼き跡と、天然スギと思われる立派な切り株があった。
冷水山の尾根までは、このような2次的自然環境が続く。
双耳峰になっている冷水山の鞍部に取り付き、そこから先は尾根歩きになる。
冷水山の西峰は展望も開け、登山を開始して初めて五番森が望まれる。
ここから眺めると、五番森の頂上までまだまだ長い道のりに感じられるが、これまでと違いこの先は尾根歩きになるので大分ペースは上がる。
今日は天気が良いので御所湖や遠く早池峰山も望まれる。
尾根は明るい樹林帯で、スギ、クロベ、ヒバ、ブナなど、和賀山塊の特徴的な林相を呈している。
802m峰の手前から再び傾斜が急になり、逆にこの辺りから樹林越しに秋田駒ケ岳、岩手山なども望まれるようになる。
林相もブナが大勢を占めるようになり、なかには胸高直径1m以上の大物も現れるようになる。
他人がつけたテープやペンキマークは一切なく、このルートの未開度を示している。
この辺りは国有林の手も及んでいないようで、原生的な素晴らしい森だ。
静寂の森には、キツツキのドラミングとウソの鳴き声だけが聞こえている。
802m峰の頂上で昼食をとる。
時間は12時過ぎ。
ここからは近すぎて五番森が見えない。
が、屏風を広げたような斜面には至るところに雪崩の前兆となるクラックが入っているのが見えるほか、雪庇の崩落による雪崩跡も散見される。
この先も屏風の袂までは気持ちの良い樹林帯が続く。
斜度も緩く、テレマークスキーでの快適な歩行だ。
この快適な歩行の終点(=屏風の袂に到達)で、そこから先は雪崩危険地帯の通過になり、気を引き締める。
ルートは過去に雪崩の痕跡のない樹林帯を左へトラバースする。
とはいっても地形図にない小さいながらも深い沢が入り組んでいてトラバースも楽ではない。
バーンはアイスバーンになっている。
トラバースを終えると傾斜のいくらか緩い斜面を選び、稜線をめがけてジグザグ登高を繰り返す。
稜線に出るとそれまでとは打って変わって展望が開ける。
すぐに五番森の頂上に到達するが、三角点峰ながら山頂表示もなく(埋まっていて?)、頂上らしくないけれど、それがまたマイナーな山らしい。
そのかわり360度視界をさえぎるものがなく、森吉山、秋田駒ケ岳、相沢山、岩手山、早池峰山、御所湖、須賀倉山、モッコ岳、羽後朝日岳など和賀山塊の核心部の山々も間近に見て取れる。
山頂でシールを外し、帰りは来た道を戻るが、冷水山の鞍部まではそこそこ滑りも楽しめる。
帰りは冷水山の鞍部に荷物をデポし、冷水山までテレマークスキーでピストンする。
こんな場面でもステップソールは重宝する。
10分足らずで冷水山(696m)の山頂に到達する。
木立に囲まれて展望の利かない小さな山頂だけれど、それに合わせたかのような小さな山名標があり、なんとなく微笑ましかった。
ウエブマスター (木曜日, 22 7月 2021 15:34)
昔の列車旅は、移動中も面白味がありました。駅にも「名所案内」の看板があり、駅名表示の下にも「●●郡●●村」とか書いてあるのが好きでした。
白州丸 (土曜日, 17 7月 2021 15:24)
宮城〜岩手〜秋田〜青森と東北縦横断の旅堪能しました。沿線の温泉に入りたい!
画像加工いいですね!!
ウエブマスター (金曜日, 16 7月 2021 23:49)
私が描いたと言いたいところですが、撮った写真を加工したんですよー
でも、文字は女流書家 泉に依頼したものです!
白州丸 (水曜日, 14 7月 2021 16:46)
産業と共に生きた雫駅の歴史が分かります。駅舎のスケッチも良いですが因みに誰のタッチ?
ウエブマスター (土曜日, 13 3月 2021 11:08)
徳永さん、了解しました!
ウエブマスターまでメールいただければ地図を返信いたします!
徳永光保 (金曜日, 12 3月 2021 07:33)
前山の記事 拝見しました。
西和賀方面にこの時期にいけるところを探していたので興味があります。だいたい見当はつくのですが
もしよろしかったらルートの地図をいただけないでしょうか。よろしくお願いします。
ウエブマスター (日曜日, 28 2月 2021 17:38)
chanmikiさん
いらっしゃいませ!
コメントありがとうございます。
日付は更新日でモナドノックは20日にツアーしました。
慣れていないと迷うと思うので、メールいただければ私の地図を送りますよ!
ウエブマスター (日曜日, 28 2月 2021 17:28)
白州丸さん
長いことコメントに気付かずスミマセン
東京は大変ですよね。
ワカサギを食べさせてあげれないのが残念です。
大願成就の次の回、長女と岩洞湖に行きましたが、またしても大漁でした!
岩手は恵まれてますよ!
chanmiki (火曜日, 23 2月 2021 21:07)
初めてコメントします。同じ小学校区、同じピアノ教室だったTです。
数年前からこのブログを見つけて、感動!尊敬!たくさん学ばせて頂いています。
本日23日も、「岩神山から田代牧場へ」を真似っこしようと行ったのですが、雪が少なそうで止め、区界駅2番ホームからの牧野へ行こうかとホームまで行きました。迷って結局、桐の木沢山へ行ったのですが、「モナドノック」を見てびっくり!
でも本日23日じゃないですよね?天気から。
私も単身赴任で106号を使っていたので、北上高地の、しかも地形のプロの記事、とても興味深く読んでいます。もちろん地元雫石のもです!
白州丸 (土曜日, 09 1月 2021 21:04)
コロナ禍で気づく事も多く、人と接せず作業をする一次産業やステイホームで地元を考える機会も多苦なりそれが新しい日常と気づくかもしれません。地元愛と働く人に感謝¡¡
白州丸 (月曜日, 28 12月 2020 11:11)
コロナ禍で始まったこの1年、地表ををすっかり覆ってしまう新雪はしばし巷のゴタゴタも忘れさせてくれます。
白州丸 (木曜日, 10 10月 2019 16:45)
馬愛の結晶でしょうね!優しい表情が印象的です。
ウエブマスター (火曜日, 30 4月 2019 11:10)
徳永様
お久しぶりです!
コメント有難うございます!
丸森良かったですねー
雪もたっぷりで何よりでした。
そろそろクマさんがウロウロしているようです。先日大松倉で足跡を見ました。お互いに気を付けましょう!
いつか、ウロコでご一緒したいです!
徳永光保 (日曜日, 21 4月 2019 20:05)
以前 森林鉄道のツアーでお世話になりました徳永です。本日こちらで紹介されている丸森にうろこテレマークで行ってきました。雪もたっぷり残っていてブナの原生林の雰囲気もよく大変気に入りました。情報参考にさせていただきました。ありがとうございました。
ウエブマスター (日曜日, 22 4月 2018 19:07)
家の前の桜はまだですが、盛岡はすでに満開。テレマークはこれからが良い季節ですよ!
白州丸 (日曜日, 15 4月 2018 15:59)
今シーズンのテレマークもそろそろ終わり?桜も咲き始めましたあ?
ウエブマスター (土曜日, 07 5月 2016 12:18)
白州丸さま
宮古では恒例のuno大会も盛り上がりました!
旧道歩きは発見があって楽しいですね!
白州丸 (木曜日, 05 5月 2016 16:03)
1泊2日の宮古の充実した旅でしたね。女性3名を従え賑やかで大きな天候の崩れも無く良かったです。
白州丸 (日曜日, 06 3月 2016 10:50)
親子の協力、ほのぼのとして少ない成果でも美味しさがギュット詰まっている事でしょう。
ウエブマスター (日曜日, 10 1月 2016 11:41)
白州丸さま
ジムニーで薪運搬!
こういうのって、田舎暮らしならではの楽しさですね!
白州丸 (土曜日, 09 1月 2016 14:13)
有り難いプレゼント、ジムニー大活躍ですね!!
白州丸 (土曜日, 26 9月 2015 17:10)
手を加えた分だけ建物は答えてくれます、又達成感は喜びになるでしょう。
白州丸 (土曜日, 26 9月 2015)
父と娘の縦走、紅葉が綺麗ですね、山ガールも頑張りましたね!!
白州丸 (土曜日, 15 8月 2015 15:52)
見事に蘇りました、15年の歴史がしみ込んだテーブル作業中はいろんな思いも浮かんだ事でしょう。我が家は削って(多分電動鉋?)もらいましたが手作業はご苦労様でした。又新しい家族の歴史(汚れ?)が刻まれる事でしょう。帰ってきた家族もさぞびっくり!!
白州丸 (火曜日, 30 6月 2015 10:19)
テーブル完成おめでとうございます。ここ迄秋田杉を利用できれば樹も喜んでいる事でしょう。無垢板は存在感ありますね!!このテーブルからどんな作品が出来るか楽しみですね
ウエブマスター (日曜日, 17 5月 2015 12:24)
リタイヤじっちゃん様
丸森制覇、おめでとうございます!私はタイミングを逃し、今年は行けず残念でしたが、動画を拝見させていただき、行った気になれました!それにしてもクマにはビックリ!!
リタイヤじっちゃん (火曜日, 12 5月 2015 09:27)
ウエブマスターの丸森ツアー(2013.5.12)でアクセスルートを知ったのは昨年の夏ごろ、それから5月の連休が待ち遠しく長いものでした。途中熊さんの歓迎を受けましたが、楽しく登ることができました。情報ありがとうございました。来冬は須賀倉を頂戴します。(山行記録YouTube”丸森”)
ウエブマスター (水曜日, 29 4月 2015 07:49)
史実探偵さま、コメント有難うございます。なるほど!奥が深そうですねー。
史実探偵:平素人 (日曜日, 26 4月 2015 00:02)
はじめまして^^、ウエブ釜石鉱山で検索訪問しました。ホームのお写真を見て、これが私の広報する、『BC.2001年に地球を半周し東北へ降臨した巨大隕石の核!』 かと思うと胸のたかまりを覚えます。よろしかったら、myブログのカテゴリー;巨大隕石(5) &, 巨大津波(4)へ、どうぞ^^!
小岩 (日曜日, 05 10月 2014 14:24)
シロハヤブサの続編に期待・・豊かな発想に拍手を送ります。
小岩じいじ (日曜日, 05 10月 2014 14:16)
岩手の旅行記は風景写真の見事さと臨場感あふれる文章にいつも感心しています。次号を楽しみにしています。
小岩 (日曜日, 05 10月 2014 14:06)
泉ちゃん堂々の3位入賞おめでとう。又1つ話題ができましたね。来年は優勝目指して下さい。
リタイヤじっちゃん (日曜日, 05 10月 2014 10:09)
体力的に門馬コースは無理ですが、教えていただいた丸森には挑戦させて頂きます。尚、剣ヶ峰山行記録はyouTubeで公開してますがどなたとも知らず貴方の車ときのこ採りの3人には無料出演して頂いでおりますのであしからず。但し誰も見ませんが。(笑)
ウェブマスター (日曜日, 05 10月 2014 00:06)
いやはや!
ニアミスしていたわけですね、リタイヤじっちゃん様!やはり早池峰剣ヶ峰、いい山ですよねー!
今度は、門馬コースにも久々にチャレンジしたいと思っています!
リタイヤじっちゃん (水曜日, 01 10月 2014 18:16)
久しぶりに覗いて見てびっくりしました。9月15日早池峰剣ヶ峰で好青年と交差したことを覚えております。あの時の白髪親父がじっちゃんです。初めて登りましたがいい山でした。
ウェブマスター (土曜日, 07 6月 2014 22:03)
ritzさん、コメント有難うございます!
阿部館山良かったですよ!来年も絶対行きます!その時お会いするかもしれませんね!今後ともこの隠れ家的HPをよろしくお願い致します!
ritz (火曜日, 03 6月 2014 00:16)
はじめまして。
4/13阿部館山の記事拝見しました。素晴らしいところですね。
4月頭に櫃取湿原や青松葉山界隈を歩き(滑り)、斜面や森の雰囲気に感動しました。北上高地は初めて訪れましたが、また行ってみたいと思っています。
これからも岩手の山滑りの記録、楽しみにしています。