櫛ケ峯は日本髪の櫛のような端正な姿をした独立峰であり、南八甲田山域で最高峰の標高1,516mを誇る盟主と呼ぶに相応しい山だ。
以前からテレマークスキーで登ってみたいとの憧れを抱いていたが、昨年初めて南八甲田山域の猿倉岳や駒ケ峯をツアーし、その姿を目の当たりにし、思いは一層強くなった。
今年の冬は記録的な暖冬少雪で、昨年のようにゴールデンウィークまで待っていては部分的に雪が解けてしまうと予想し、国道103号の谷地温泉から先の冬季閉鎖が解除されて最初の土曜日である4月7日に出かけた。
十和田市街地から望む八甲田の山並みは雪を纏って美しいが、国道102号で十和田温泉郷まで行き、そこから国道103号に入るまで周辺に雪はなかった。
蔦温泉を過ぎ、蔦トンネルを過ぎた辺りからようやく本格的な残雪期の風景に変わった。
谷地温泉のゲートは通行可能となる9時直後に通過。この辺りから車窓は雪の回廊の様相を呈してくる。
登山口となる睡蓮沼は元々駐車場がない上に、開通直後とあってか路肩のスペースも限られ、既に駐車の余裕はほとんどなかった。その点で、八幡平アスピーテラインは非常に利用者に配慮された道路だと気付く。
睡蓮沼付近一帯の積雪はさすがに十分で、辺りを見渡すと雪庇が崩落した斜面があった。
今日はかなり気温が高くなる予報なので、雪崩には細心の注意が必要だ。
まずは猿倉岳西側の鞍部を目指す。
標高が高くなるにつれ、背後に聳える大岳、小岳、高田大岳など北八甲田の山々が大きく望まれる。
猿倉岳西側の鞍部から南へ広がるピステはこのコース随一のスケール感で、滑降する快適さだけでなく、正面に乗鞍岳を望むロケーションも素晴らしい。
気温が高いため雪が重めで快適なザラメとはいかなかったが、広大なピステを独り占めで楽しんだ。
鞍部から100m程の標高差を滑り降りたら、そこから駒ケ峯東側鞍部を目標にトラバース気味に登り返す。
途中、駒ケ峯と櫛ケ峯が並んで見える箇所で昼食をとる。
いつも職場で食べているのと同じような簡単な手作り弁当だけど、最高のロケーションで贅沢な気分だ。
腹ごしらえが済んだら、いよいよ櫛ケ峯を目指すことになるが、その距離は遠く感じる。
駒ケ峯東側の鞍部を越えて稜線の北側をトラバースする計画だが、櫛ケ峯手前の鞍部から山頂まで標高差200mの直登が控えており覚悟が必要だ。
そんなことを考えながら駒ケ峯に向かって歩いていると、東斜面に次第にクラックが入り、しかも見る間に伸びていくのが見えた。
この気温なら当然だろう。
下山時に滑る予定でいた斜面だけど、ここは回避するのが賢明だと判断した。
稜線の北側は雪質も幾らか良くなり、右手に広大な雪原を眺めながら快適なトラバースだった。
標高1,375mのピーク付近で稜線に戻り、そこからは圧巻のスケールで櫛ケ峯が望まれた。
東側の大斜面は滑降欲をそそられるけれど、直前にクラックが入るのを見た駒ケ峯の斜面と同じ方角を向いており、しかも、傾斜はこちらの方が急で、スケールも遥かに大きい。
従って、雪崩リスクを考慮すれば、東斜面は登りも下りも避けるべきと、悩んだ末に判断した。
雪崩リスクが低い櫛ケ峯から北に伸びる尾根には登山者が何名かおり、幅も滑降するのに問題ない広さだった。
結構な急勾配だけれどステップソールの粘着力だけで問題なく登れた。
待望の櫛ケ峯山頂は貸切で眺望を満喫した。
最も印象的なのは十和田湖で、意外に遠く感じた。
念願の櫛ケ峯登頂を果たし満足する。
しかし下山も油断はできない。
雪崩リスクを考慮すれば、登りとは違うルートを取る必要がある。
山頂から北に伸びる尾根を下り、適当な場所で沢を越えて標高1,296mピークの北側に回り込み、あとは雪原地帯をトラバースし、石倉岳や硫黄岳を真北に見る場所から睡蓮沼に向かって下るルートがベストと判断した。
山頂から北へ伸びる尾根を滑り降り、沢との高低差が低い場所を選んで越える。
対岸の斜面を少し登り返して振り返る櫛ケ峯の姿は駒ケ峯方面から眺めるのと全く異なる印象で、こちらも素晴らしい。
ただ、雪原のトラバースは距離が長く退屈だったけれど、今日の雪の状態を考えれば仕方ないと自分に言い聞かせる。
最後の滑降ポイントとなる睡蓮沼への下りは、北斜面ということもあり幾らか雪質も軽くなった。
下山後は、焼山にある十和田湖温泉郷で汗を流した。
気分もスッキリして久慈を目指す。
不意に振り返った八甲田連峰の夕景が何とも印象的だった。
ウエブマスター (木曜日, 22 7月 2021 15:34)
昔の列車旅は、移動中も面白味がありました。駅にも「名所案内」の看板があり、駅名表示の下にも「●●郡●●村」とか書いてあるのが好きでした。
白州丸 (土曜日, 17 7月 2021 15:24)
宮城〜岩手〜秋田〜青森と東北縦横断の旅堪能しました。沿線の温泉に入りたい!
画像加工いいですね!!
ウエブマスター (金曜日, 16 7月 2021 23:49)
私が描いたと言いたいところですが、撮った写真を加工したんですよー
でも、文字は女流書家 泉に依頼したものです!
白州丸 (水曜日, 14 7月 2021 16:46)
産業と共に生きた雫駅の歴史が分かります。駅舎のスケッチも良いですが因みに誰のタッチ?
ウエブマスター (土曜日, 13 3月 2021 11:08)
徳永さん、了解しました!
ウエブマスターまでメールいただければ地図を返信いたします!
徳永光保 (金曜日, 12 3月 2021 07:33)
前山の記事 拝見しました。
西和賀方面にこの時期にいけるところを探していたので興味があります。だいたい見当はつくのですが
もしよろしかったらルートの地図をいただけないでしょうか。よろしくお願いします。
ウエブマスター (日曜日, 28 2月 2021 17:38)
chanmikiさん
いらっしゃいませ!
コメントありがとうございます。
日付は更新日でモナドノックは20日にツアーしました。
慣れていないと迷うと思うので、メールいただければ私の地図を送りますよ!
ウエブマスター (日曜日, 28 2月 2021 17:28)
白州丸さん
長いことコメントに気付かずスミマセン
東京は大変ですよね。
ワカサギを食べさせてあげれないのが残念です。
大願成就の次の回、長女と岩洞湖に行きましたが、またしても大漁でした!
岩手は恵まれてますよ!
chanmiki (火曜日, 23 2月 2021 21:07)
初めてコメントします。同じ小学校区、同じピアノ教室だったTです。
数年前からこのブログを見つけて、感動!尊敬!たくさん学ばせて頂いています。
本日23日も、「岩神山から田代牧場へ」を真似っこしようと行ったのですが、雪が少なそうで止め、区界駅2番ホームからの牧野へ行こうかとホームまで行きました。迷って結局、桐の木沢山へ行ったのですが、「モナドノック」を見てびっくり!
でも本日23日じゃないですよね?天気から。
私も単身赴任で106号を使っていたので、北上高地の、しかも地形のプロの記事、とても興味深く読んでいます。もちろん地元雫石のもです!
白州丸 (土曜日, 09 1月 2021 21:04)
コロナ禍で気づく事も多く、人と接せず作業をする一次産業やステイホームで地元を考える機会も多苦なりそれが新しい日常と気づくかもしれません。地元愛と働く人に感謝¡¡
白州丸 (月曜日, 28 12月 2020 11:11)
コロナ禍で始まったこの1年、地表ををすっかり覆ってしまう新雪はしばし巷のゴタゴタも忘れさせてくれます。
白州丸 (木曜日, 10 10月 2019 16:45)
馬愛の結晶でしょうね!優しい表情が印象的です。
ウエブマスター (火曜日, 30 4月 2019 11:10)
徳永様
お久しぶりです!
コメント有難うございます!
丸森良かったですねー
雪もたっぷりで何よりでした。
そろそろクマさんがウロウロしているようです。先日大松倉で足跡を見ました。お互いに気を付けましょう!
いつか、ウロコでご一緒したいです!
徳永光保 (日曜日, 21 4月 2019 20:05)
以前 森林鉄道のツアーでお世話になりました徳永です。本日こちらで紹介されている丸森にうろこテレマークで行ってきました。雪もたっぷり残っていてブナの原生林の雰囲気もよく大変気に入りました。情報参考にさせていただきました。ありがとうございました。
ウエブマスター (日曜日, 22 4月 2018 19:07)
家の前の桜はまだですが、盛岡はすでに満開。テレマークはこれからが良い季節ですよ!
白州丸 (日曜日, 15 4月 2018 15:59)
今シーズンのテレマークもそろそろ終わり?桜も咲き始めましたあ?
ウエブマスター (土曜日, 07 5月 2016 12:18)
白州丸さま
宮古では恒例のuno大会も盛り上がりました!
旧道歩きは発見があって楽しいですね!
白州丸 (木曜日, 05 5月 2016 16:03)
1泊2日の宮古の充実した旅でしたね。女性3名を従え賑やかで大きな天候の崩れも無く良かったです。
白州丸 (日曜日, 06 3月 2016 10:50)
親子の協力、ほのぼのとして少ない成果でも美味しさがギュット詰まっている事でしょう。
ウエブマスター (日曜日, 10 1月 2016 11:41)
白州丸さま
ジムニーで薪運搬!
こういうのって、田舎暮らしならではの楽しさですね!
白州丸 (土曜日, 09 1月 2016 14:13)
有り難いプレゼント、ジムニー大活躍ですね!!
白州丸 (土曜日, 26 9月 2015 17:10)
手を加えた分だけ建物は答えてくれます、又達成感は喜びになるでしょう。
白州丸 (土曜日, 26 9月 2015)
父と娘の縦走、紅葉が綺麗ですね、山ガールも頑張りましたね!!
白州丸 (土曜日, 15 8月 2015 15:52)
見事に蘇りました、15年の歴史がしみ込んだテーブル作業中はいろんな思いも浮かんだ事でしょう。我が家は削って(多分電動鉋?)もらいましたが手作業はご苦労様でした。又新しい家族の歴史(汚れ?)が刻まれる事でしょう。帰ってきた家族もさぞびっくり!!
白州丸 (火曜日, 30 6月 2015 10:19)
テーブル完成おめでとうございます。ここ迄秋田杉を利用できれば樹も喜んでいる事でしょう。無垢板は存在感ありますね!!このテーブルからどんな作品が出来るか楽しみですね
ウエブマスター (日曜日, 17 5月 2015 12:24)
リタイヤじっちゃん様
丸森制覇、おめでとうございます!私はタイミングを逃し、今年は行けず残念でしたが、動画を拝見させていただき、行った気になれました!それにしてもクマにはビックリ!!
リタイヤじっちゃん (火曜日, 12 5月 2015 09:27)
ウエブマスターの丸森ツアー(2013.5.12)でアクセスルートを知ったのは昨年の夏ごろ、それから5月の連休が待ち遠しく長いものでした。途中熊さんの歓迎を受けましたが、楽しく登ることができました。情報ありがとうございました。来冬は須賀倉を頂戴します。(山行記録YouTube”丸森”)
ウエブマスター (水曜日, 29 4月 2015 07:49)
史実探偵さま、コメント有難うございます。なるほど!奥が深そうですねー。
史実探偵:平素人 (日曜日, 26 4月 2015 00:02)
はじめまして^^、ウエブ釜石鉱山で検索訪問しました。ホームのお写真を見て、これが私の広報する、『BC.2001年に地球を半周し東北へ降臨した巨大隕石の核!』 かと思うと胸のたかまりを覚えます。よろしかったら、myブログのカテゴリー;巨大隕石(5) &, 巨大津波(4)へ、どうぞ^^!
小岩 (日曜日, 05 10月 2014 14:24)
シロハヤブサの続編に期待・・豊かな発想に拍手を送ります。
小岩じいじ (日曜日, 05 10月 2014 14:16)
岩手の旅行記は風景写真の見事さと臨場感あふれる文章にいつも感心しています。次号を楽しみにしています。
小岩 (日曜日, 05 10月 2014 14:06)
泉ちゃん堂々の3位入賞おめでとう。又1つ話題ができましたね。来年は優勝目指して下さい。
リタイヤじっちゃん (日曜日, 05 10月 2014 10:09)
体力的に門馬コースは無理ですが、教えていただいた丸森には挑戦させて頂きます。尚、剣ヶ峰山行記録はyouTubeで公開してますがどなたとも知らず貴方の車ときのこ採りの3人には無料出演して頂いでおりますのであしからず。但し誰も見ませんが。(笑)
ウェブマスター (日曜日, 05 10月 2014 00:06)
いやはや!
ニアミスしていたわけですね、リタイヤじっちゃん様!やはり早池峰剣ヶ峰、いい山ですよねー!
今度は、門馬コースにも久々にチャレンジしたいと思っています!
リタイヤじっちゃん (水曜日, 01 10月 2014 18:16)
久しぶりに覗いて見てびっくりしました。9月15日早池峰剣ヶ峰で好青年と交差したことを覚えております。あの時の白髪親父がじっちゃんです。初めて登りましたがいい山でした。
ウェブマスター (土曜日, 07 6月 2014 22:03)
ritzさん、コメント有難うございます!
阿部館山良かったですよ!来年も絶対行きます!その時お会いするかもしれませんね!今後ともこの隠れ家的HPをよろしくお願い致します!
ritz (火曜日, 03 6月 2014 00:16)
はじめまして。
4/13阿部館山の記事拝見しました。素晴らしいところですね。
4月頭に櫃取湿原や青松葉山界隈を歩き(滑り)、斜面や森の雰囲気に感動しました。北上高地は初めて訪れましたが、また行ってみたいと思っています。
これからも岩手の山滑りの記録、楽しみにしています。