久慈に単身赴任するようになり、週末毎に片道120kmを2時間40分かけて往復している。
途中で大坊峠と平庭峠を越えるため、急カーブ、急勾配が連続し、冬場は特に油断ならない。
滝沢市、岩手町、葛巻町を素通りして行くわけだが、せっかくだからたまには途中で寄り道でもしてみたいと考えていた。
そんな時、以前から気になっていた山の名前を見つけた。
それは岩手町にある空雲山だ。
標高は902mで、地形図には登山道が記されていない藪山だ。
気になっていたのはメルヘンチックなその山名に他ならず、山容的には魅力は無さそうな気がした。
しかし、麓に採草地があるので、ルートの取り方次第では多少は滑りも楽しめそうなので、テレマークスキーでチャレンジしようとチャンスを伺うことにした。
今年は暖冬で雪もかなり少ない。一戸町菜魚湖のワカサギ釣りも氷が張らないため史上初めて解禁しないことになった。
空雲山は私の通い道である国道281号から遠く離れているため、積雪の状況が分からない。
それでも大坊峠周辺の積雪状況から、何とか雪はあるだろうと判断し、久慈に向かう途中で登ってみることにした。
盛岡市玉山渋民あたりの国道4号を走っていても、周りの田んぼに雪はなく不安になってくる。
岩手川口を過ぎ、県道薮川川口線で山間部に入ってくると、ようやく雪が目立つようになってきて少しホッとする。
積雪量は少ないが、今回の登山ルートは空雲山の北斜面なので雪付きは良いと踏んでいる。
岩手町南山形の大渡まで来ると空雲山の全容を望むことができる。
標高がそれほど高くない空雲山は近くから望む場所は限られる。
山の形にも特徴がないため遠くからも確認しづらい。
そういう意味で大渡はベストな場所かもしれない。
ここから見る限り、山頂付近は樹林が濃く、滑れそうには見えなかった。
大渡集落を抜け再びちょっとした峠道になり頂上に建つアンテナが今回のツアー出発点となる。
幸い、空雲山に向かって雪は繋がっているようで、登山者の足跡は全くなかった。
早速スキーウエアに着替え準備をする。板はBlack Diamondのsynchro X もちろんステップソールだ。
暖冬少雪であっても、それほど雪の多くないイメージの岩手町で、こうしてツアーができることが嬉しい。
ただ、この時点では、その後の困難を予想していなかったのだが…
しばらくは雪で覆われた作業道を進む。相寅瀬川を挟んだ対岸には採草地が広がっている。
それにしても空雲山といい相寅瀬川といい、この辺りの地名は由来が気になる。
相寅瀬川の流れが細くなったあたりで対岸に渡る。
橋や道はないがスキーを脱がずとも渡ることができた。
その先は採草地を少し登る。
積雪は多くないが北斜面故に雪は着いており、帰りの滑走ポイントと見込んでいる。
ステップソールは雪をよく噛んで気持ちよく登れる。そう思った矢先、鹿が3頭、視線横方向の山中を横切った。
採草地が終わり、いよいよ藪山に入る。
目星を付けていた作業道跡がすぐ上の方に見えたので、まずはそこを目指す。作業道跡は灌木が生えていたが、その後の状況に比べればほんの序の口だった。
灌木帯を登り、時間も12時40分になったので昼食にする。
スタートしてからここまで1時間がたった。
GPSなどないので自分がどの位置にいるのか正確にはわからないが、山頂までそんなに遠くはないはずだ。
そう思って昼食後はペースを上げる。
しかし、登れば登るほど傾斜はキツくなり、シールなしでは登れなくなり、装着することにした。
ところが、シールのテール部分にテンションをかけるフックのベルトがプラスチックの劣化で左右とも粉々に割れた。
昨シーズンは何でもなかったのに突然の現象でビックリしたが、この程度のツアーで良かった。
フックはなくてもシールの粘着力だけで持ち堪えられると踏んだ。
しかし、本当の想定外は稜線に到達してからだった。
そこから頂上付近まで、藪ではなくカラマツの密林だった。
時折ハリギリも混ざっているのでとても歩ける状態ではない。
だけど、残りの標高差は100m程度、距離は370m程度の位置にいると判断し根性で突破することにした。
山頂付近になって再び作業道跡に合流すると密林から解放され藪に戻る。
視界が開ける場所からは姫神山が美しく望まれた。
山頂直下になってようやく林相が良くなり、スキーを履いてきた意味を実感した。
そんな気持の良い林内歩きも束の間、登り始めから2時間30分で苦労の末、空雲山頂上に到達した。山頂には藪もなく、岩手山方面が開けているほか樹林越しに風景も見れた。
山名板は2種類あった。
こうして麓から眺めた山頂に立ってみても空雲山という名前の実感は湧いてこない。ここまでの歩程時間は2時間30分だった。
下山は同じルートを辿る。
登りで苦労した密林は下山だとさらに手強かったけれど、先が見えているだけ気持ち的に楽だ。
採草地は傾斜は緩いものの思いのほか板が走りスキーが出来た。
なので、登り返してターンを楽しんだ。
出発地点に着く頃にはすっかり夕暮れになり、バックライトの岩手山が美しく望まれた。
下山は1時間30分だった。
穏やかな天気にも恵まれ、暖冬少雪ながら念願の空雲山にテレマークスキーで登ることができ満足した。
ウエブマスター (木曜日, 22 7月 2021 15:34)
昔の列車旅は、移動中も面白味がありました。駅にも「名所案内」の看板があり、駅名表示の下にも「●●郡●●村」とか書いてあるのが好きでした。
白州丸 (土曜日, 17 7月 2021 15:24)
宮城〜岩手〜秋田〜青森と東北縦横断の旅堪能しました。沿線の温泉に入りたい!
画像加工いいですね!!
ウエブマスター (金曜日, 16 7月 2021 23:49)
私が描いたと言いたいところですが、撮った写真を加工したんですよー
でも、文字は女流書家 泉に依頼したものです!
白州丸 (水曜日, 14 7月 2021 16:46)
産業と共に生きた雫駅の歴史が分かります。駅舎のスケッチも良いですが因みに誰のタッチ?
ウエブマスター (土曜日, 13 3月 2021 11:08)
徳永さん、了解しました!
ウエブマスターまでメールいただければ地図を返信いたします!
徳永光保 (金曜日, 12 3月 2021 07:33)
前山の記事 拝見しました。
西和賀方面にこの時期にいけるところを探していたので興味があります。だいたい見当はつくのですが
もしよろしかったらルートの地図をいただけないでしょうか。よろしくお願いします。
ウエブマスター (日曜日, 28 2月 2021 17:38)
chanmikiさん
いらっしゃいませ!
コメントありがとうございます。
日付は更新日でモナドノックは20日にツアーしました。
慣れていないと迷うと思うので、メールいただければ私の地図を送りますよ!
ウエブマスター (日曜日, 28 2月 2021 17:28)
白州丸さん
長いことコメントに気付かずスミマセン
東京は大変ですよね。
ワカサギを食べさせてあげれないのが残念です。
大願成就の次の回、長女と岩洞湖に行きましたが、またしても大漁でした!
岩手は恵まれてますよ!
chanmiki (火曜日, 23 2月 2021 21:07)
初めてコメントします。同じ小学校区、同じピアノ教室だったTです。
数年前からこのブログを見つけて、感動!尊敬!たくさん学ばせて頂いています。
本日23日も、「岩神山から田代牧場へ」を真似っこしようと行ったのですが、雪が少なそうで止め、区界駅2番ホームからの牧野へ行こうかとホームまで行きました。迷って結局、桐の木沢山へ行ったのですが、「モナドノック」を見てびっくり!
でも本日23日じゃないですよね?天気から。
私も単身赴任で106号を使っていたので、北上高地の、しかも地形のプロの記事、とても興味深く読んでいます。もちろん地元雫石のもです!
白州丸 (土曜日, 09 1月 2021 21:04)
コロナ禍で気づく事も多く、人と接せず作業をする一次産業やステイホームで地元を考える機会も多苦なりそれが新しい日常と気づくかもしれません。地元愛と働く人に感謝¡¡
白州丸 (月曜日, 28 12月 2020 11:11)
コロナ禍で始まったこの1年、地表ををすっかり覆ってしまう新雪はしばし巷のゴタゴタも忘れさせてくれます。
白州丸 (木曜日, 10 10月 2019 16:45)
馬愛の結晶でしょうね!優しい表情が印象的です。
ウエブマスター (火曜日, 30 4月 2019 11:10)
徳永様
お久しぶりです!
コメント有難うございます!
丸森良かったですねー
雪もたっぷりで何よりでした。
そろそろクマさんがウロウロしているようです。先日大松倉で足跡を見ました。お互いに気を付けましょう!
いつか、ウロコでご一緒したいです!
徳永光保 (日曜日, 21 4月 2019 20:05)
以前 森林鉄道のツアーでお世話になりました徳永です。本日こちらで紹介されている丸森にうろこテレマークで行ってきました。雪もたっぷり残っていてブナの原生林の雰囲気もよく大変気に入りました。情報参考にさせていただきました。ありがとうございました。
ウエブマスター (日曜日, 22 4月 2018 19:07)
家の前の桜はまだですが、盛岡はすでに満開。テレマークはこれからが良い季節ですよ!
白州丸 (日曜日, 15 4月 2018 15:59)
今シーズンのテレマークもそろそろ終わり?桜も咲き始めましたあ?
ウエブマスター (土曜日, 07 5月 2016 12:18)
白州丸さま
宮古では恒例のuno大会も盛り上がりました!
旧道歩きは発見があって楽しいですね!
白州丸 (木曜日, 05 5月 2016 16:03)
1泊2日の宮古の充実した旅でしたね。女性3名を従え賑やかで大きな天候の崩れも無く良かったです。
白州丸 (日曜日, 06 3月 2016 10:50)
親子の協力、ほのぼのとして少ない成果でも美味しさがギュット詰まっている事でしょう。
ウエブマスター (日曜日, 10 1月 2016 11:41)
白州丸さま
ジムニーで薪運搬!
こういうのって、田舎暮らしならではの楽しさですね!
白州丸 (土曜日, 09 1月 2016 14:13)
有り難いプレゼント、ジムニー大活躍ですね!!
白州丸 (土曜日, 26 9月 2015 17:10)
手を加えた分だけ建物は答えてくれます、又達成感は喜びになるでしょう。
白州丸 (土曜日, 26 9月 2015)
父と娘の縦走、紅葉が綺麗ですね、山ガールも頑張りましたね!!
白州丸 (土曜日, 15 8月 2015 15:52)
見事に蘇りました、15年の歴史がしみ込んだテーブル作業中はいろんな思いも浮かんだ事でしょう。我が家は削って(多分電動鉋?)もらいましたが手作業はご苦労様でした。又新しい家族の歴史(汚れ?)が刻まれる事でしょう。帰ってきた家族もさぞびっくり!!
白州丸 (火曜日, 30 6月 2015 10:19)
テーブル完成おめでとうございます。ここ迄秋田杉を利用できれば樹も喜んでいる事でしょう。無垢板は存在感ありますね!!このテーブルからどんな作品が出来るか楽しみですね
ウエブマスター (日曜日, 17 5月 2015 12:24)
リタイヤじっちゃん様
丸森制覇、おめでとうございます!私はタイミングを逃し、今年は行けず残念でしたが、動画を拝見させていただき、行った気になれました!それにしてもクマにはビックリ!!
リタイヤじっちゃん (火曜日, 12 5月 2015 09:27)
ウエブマスターの丸森ツアー(2013.5.12)でアクセスルートを知ったのは昨年の夏ごろ、それから5月の連休が待ち遠しく長いものでした。途中熊さんの歓迎を受けましたが、楽しく登ることができました。情報ありがとうございました。来冬は須賀倉を頂戴します。(山行記録YouTube”丸森”)
ウエブマスター (水曜日, 29 4月 2015 07:49)
史実探偵さま、コメント有難うございます。なるほど!奥が深そうですねー。
史実探偵:平素人 (日曜日, 26 4月 2015 00:02)
はじめまして^^、ウエブ釜石鉱山で検索訪問しました。ホームのお写真を見て、これが私の広報する、『BC.2001年に地球を半周し東北へ降臨した巨大隕石の核!』 かと思うと胸のたかまりを覚えます。よろしかったら、myブログのカテゴリー;巨大隕石(5) &, 巨大津波(4)へ、どうぞ^^!
小岩 (日曜日, 05 10月 2014 14:24)
シロハヤブサの続編に期待・・豊かな発想に拍手を送ります。
小岩じいじ (日曜日, 05 10月 2014 14:16)
岩手の旅行記は風景写真の見事さと臨場感あふれる文章にいつも感心しています。次号を楽しみにしています。
小岩 (日曜日, 05 10月 2014 14:06)
泉ちゃん堂々の3位入賞おめでとう。又1つ話題ができましたね。来年は優勝目指して下さい。
リタイヤじっちゃん (日曜日, 05 10月 2014 10:09)
体力的に門馬コースは無理ですが、教えていただいた丸森には挑戦させて頂きます。尚、剣ヶ峰山行記録はyouTubeで公開してますがどなたとも知らず貴方の車ときのこ採りの3人には無料出演して頂いでおりますのであしからず。但し誰も見ませんが。(笑)
ウェブマスター (日曜日, 05 10月 2014 00:06)
いやはや!
ニアミスしていたわけですね、リタイヤじっちゃん様!やはり早池峰剣ヶ峰、いい山ですよねー!
今度は、門馬コースにも久々にチャレンジしたいと思っています!
リタイヤじっちゃん (水曜日, 01 10月 2014 18:16)
久しぶりに覗いて見てびっくりしました。9月15日早池峰剣ヶ峰で好青年と交差したことを覚えております。あの時の白髪親父がじっちゃんです。初めて登りましたがいい山でした。
ウェブマスター (土曜日, 07 6月 2014 22:03)
ritzさん、コメント有難うございます!
阿部館山良かったですよ!来年も絶対行きます!その時お会いするかもしれませんね!今後ともこの隠れ家的HPをよろしくお願い致します!
ritz (火曜日, 03 6月 2014 00:16)
はじめまして。
4/13阿部館山の記事拝見しました。素晴らしいところですね。
4月頭に櫃取湿原や青松葉山界隈を歩き(滑り)、斜面や森の雰囲気に感動しました。北上高地は初めて訪れましたが、また行ってみたいと思っています。
これからも岩手の山滑りの記録、楽しみにしています。